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巫哉

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。確信があった。『彼』が日紅を置いて姿を消すことなどあろうはずがないのだ。



「あいつ、いつもなんかふらふらしてんじゃん。どっか出かけてんじゃないの?」



「あたしも最初はそうかも、って思ってたけど…だって変!もう一週間だもん。巫哉がいないなんておかしいよ。今までいなかったことなんてなかったんだもん」



 日紅はばらばらと涙を零しながら駄々っ子のように首を振った。



「どうしよう…犀、どうしよう!?誘拐とか監禁だったら!今巫哉どうなってるの!?どこにいるの!?どうしよう助けに行ってあげなきゃ。も、もしもこのまま会えなくなったら」



「落ち着けって!月夜は絶対におまえを置いてどこかに行ったりしない。そうだろ?日紅」



 言いながら、何で『彼』のことを自分の口からわざわざ日紅に伝えなければならないのかと、犀は『彼』に無性に腹が立った。



 先に日紅に出会ったのは『彼』だということもわかっているし、その分のふたりの結びつきが強いのも悔しいが分かっている。けれど、事実だけじゃ我儘(わがまま)な感情は納得してくれない。



 しかしこんな状態の日紅にその感情をぶつけるなんて大人げないことは絶対にするまいと、日紅に悟られないように犀は気持ちを落ち着かせる。



「………………」



 日紅は俯いたまま、唇を震わせた。



 日紅も、何の根拠もなく取り乱しているわけではない。『彼』を最後に見たとき、日紅の見間違えでさえなければ『彼』は…涙を流していた。ほんの一瞬だったし、最初はまさかそんなことあるわけないと気のせいだと思っていたのだが、その時から『彼』の姿が消えたことを思えば、もしかしたら本当に『彼』は泣いていたのかもしれない。



 それを犀に伝えようか迷って、でも言葉にできずに日紅は別のことを口にする。




「犀。あたし、夢を見るの。まっ暗闇の中に一人で巫哉が座っていて、近くに行こうとするんだけど近づけなくて。巫哉の紅い目が、暗闇の中でもじっとこっち見てるのがわかって。巫哉はあたしのとこに近づけるんだけどあたしから来てほしいって思ってる。あたしを待ってる」



 犀は日紅の髪を撫でながら頷いた。



 その一方で思う。赤い目?なんじゃそりゃ。あいつが兎ってタマでもあるまいし。泣きすぎて目が赤いなんてオチか?



「日紅。どうして夢の中の月夜の目は赤かったんだ?」



 落ち着かせるつもりでなんの気なしに犀は話を振った。



 わからない、と返ってくる答えは予測できていた。だが。



 それを聞いて、日紅はゆっくりと犀を見上げた。犀の質問を自分の中でゆっくり噛み砕い
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