第二十五話
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ても次の瞬間には見破られ、人間の腕以上の動きをしても人間らしさは無く、人と同じ速さで走ろうが人間以上に高くジャンプしても、それは人間の動作とは異質な動きであり、先程のエルシャンの擬体の様にロボットだと思わせない。人間であることを疑わせないのは無理な事である。
目の前に存在する擬体と称するロボットは地球の技術で作られたものでない事は、ロボット工学について興味を持っている程度の素人にも分かる事だった。
エルシャンのDSWOがゲームではないという発言の意図が、それまで漠然と思っていた『DSWOが本来のゲーム=娯楽以外の目的でデータ収集に使われているのでは?』から、全く別の意図に感じられてくる。
「あなたは、宇宙人だとでも言うのか?」
参加者の1人が全員が思っている疑問を投げかけた。
「私が宇宙人? まさか違いますよ」
エルシャンの答えに、違って良かったと安堵する反面、それでは何者なんだと言う新たな疑問が生まれる。
「私は皆さんに既に自己紹介しているはずです」
エルシャンは、ほら解いてみろと言わんばかりに参加者達を見渡す。
「あなたは……AI?」
自分の考えに確信を抱けないままに山田が答える。
「正解です。さすがですね山田成海さん。今回の全参加者の中で一番高い知能を持つだけのことはあります」
芝山が山田という苗字に反応して隣を振り返ると、隣人は気まずそうに視線を外す。
彼が振り返ったのは半ば反射的なものだったが、彼女の態度が余りに不自然なために心の中に疑惑が生まれ、山田や尾津がこの場にいないこと他の会場にいるという考えが揺らぐ。
そう考える始めると彼女の態度はおかしかった。妙に自分に積極的にアプローチしているように感じられた。
自分を女性にモテるタイプだとは、これっぽっちも思ってはいない芝山にとっては、喜びつつも何かあるという疑いが心の中で引っかかっていた。
「もしかして、山田よう──」
芝山の疑問はエルシャンの声によって遮られる。
「私は連盟軍サジタリウス腕方面軍。第1211基幹艦隊旗艦。大型機動要塞シルバ6のマザーブレインの艦隊司令官補佐用AIです。現在は艦隊司令官エルシャン・トリマの人格を再現しており──再現してない。勝手に捏造するな暴走馬鹿AIが!──失礼しました。通信状態が悪いようで雑音が入りました──ふざけるなノイズが走ってるのはお前の──司令官ウルサイ。通信回路遮断……ええ御迷惑をおかけしました。現在は艦隊司令官エルシャン・トリマの人格を再現しております」
参加者達にはもう何が何だか突っ込む気にすらなれなかった。
「ああ、折角のシリアスな場面だったのに、司令官の馬鹿……」
落ち込みどんよりとした重たい空気を作り出すAI操作の擬体と言う存在を、参加者達は明らかにもてあましていた。どう
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