暁 〜小説投稿サイト〜
故郷は青き星
第二十五話
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確かに画面の中のエルシャンの手の平もぼやけることなくくっきりと映っていた。

 ミリ単位で同じ顔をした人物の映像が、異なる場所で同時に撮影されるなんて事はありえない。それを前提にして芝山はこのからくりの仕組みについて考える。
 それは手品のネタを暴くのと同じアプローチで、その場に存在する要素を組み合わせて「どうすれば、このような状況を作り上げられるか?」と考えるのではなく「このような状況を作り出すには何をすれば良いか?」というトップダウンアプローチ。
 そして相手から与えられた前提を一切信じないという考えが有効だった。
 まず疑うのは、映された映像に関して他の会場の映像、もしくはこの会場の映像も含めて偽物でリアルタイムで撮影されたもので無いということ。
 そんな大掛かりな真似をして騙す理由が見つからないが、ここで余計な『何故?』を頭の中に持ち込まない。
 目の前にエルシャンが本物で、ディスプレイの中に映っているエルシャンは全て偽物。本物のエルシャンをモーションキャプチャーして、エルシャン本人をモデリングした三次元モデルを操作して映し込んでいる……こんなところだろうか? いや何か見落としている気が……

「ば、馬鹿な!」
 突然、尾津が狼狽した声を上げる。
 彼女の雰囲気にそぐわない声に芝山が右隣を振り返ると、椅子から半ば腰を浮かして背後を振り返ったまま宙の一点を見据えていた。
 芝山がその視線の先を追ってみるが何もなく、未だ視線を動かさずに驚愕の表情を浮かべている彼女に「どうした?」と声を掛けると、声を震わせて一言だけ言葉を発した。
「無い……」
「無い?」
 相手が梅木なら遠慮なく「生理か?」とでも軽口を叩いただろうが、初対面の美人さんにそんな事は言うわけにはいかなかった。もっともゲーム内で山田と尾津に対しては、男同士のつもりの気楽さでどうしようもない下ネタもバンバン飛ばして、下ネタを投げかけられた2人を爆弾処理で苦労させてきたのだった。
「カメラがどこにも見当たらないんだ」
 そう言って空中に何かを探すように視線を彷徨わせる。
「カメラが?」
 尾津の言葉に、ディスプレイに映るこのエルシャンのアングルから、カメラがあるだろうポイントを推測するが、その場所にはカメラらしきものは存在しない。
 そしてカメラが無いにも関わらず、画面の中のカメラのアングルは左側に回りこむように移動している。
 既に現状は芝山の想像力も認識力も超えていた。真剣に考えていた自分が馬鹿馬鹿しくなり乾いた空ろな笑いを漏らすしかなかった。

「やっと気付いてもらえたので映像はもう良いでしょう」
 エルシャンが気取った仕草で指を鳴らすと大型IELディスプレイに映っていた映像が消える。
「それでは謎解きのヒントを出しましょう。この状況を作り上
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