第一幕その七
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話みたいだね」
庶民は口に手を当てながら言った。
「それどういうこと?」
庶民の言葉に姫君が尋ねた。
「うん、実はザクセン伯って公爵の奥方の愛人だって噂があるんだ。実際二人でよくお会いしているしね」
「あ、その話聞いたことがあるわ」
女神がその話に突っ込みを入れた。
「何でも公爵夫人がハンサムな伯爵にえらくお熱だとか」
「へえ、そうだったんだ。僕は伯爵とアドリアーナのことは知っていたけどね」
大臣がその話に頷いた。
「あ、皆隠れましょう。誰か来たわよ」
四人はサッと部屋の片隅に身を隠した。見れば公爵と僧院長が部屋に戻って来たのだ。
「別荘に行ったのじゃなかったのかしら」
女神がそれを見て首を傾げる。
「見て。もう一人誰かいるわ」
姫君が公爵と僧院長の後ろについてきている男を指差して囁いた。
「いいな、ではこれを右から三番目のボックスにいる殿方に手渡してくれ」
公爵はその男に対して手紙を手渡して言った。
「あれは照明の新入りじゃないか」
「あいつまた頼まれて断れなかったな」
男優二人が苦笑しながら言った。
「わかりました」
新入りは少しオドオドしながら応えた。どうもあまり気の強い男ではないらしい。
「よし、ではこれはチップだ」
公爵はそう言うとひとかけらのエメラルドを彼に手渡した。気前はいい。
「あ、有り難うございます」
彼はそれに頭を垂れるとすぐにその場を去った。そして観客席へ向かって行った。
「これでよし。まさか途中で思わぬ協力者が出てくれるとはな」
「公爵、買収は協力者と言わないのでは」
「おっと、そうだったかな。ハハハ」
彼はそう言うとカラカラと笑った。そして二人はその場を後にした。
「どうやら本格的に面白い事になりそうね」
「一体どうなるのかしら」
女優達は楽しそうな顔で言った。
「これは凄いことになるかもね」
「お二人にとっては可哀想なことになりそうだけれど」
男優二人も彼女達と同じく楽しそうな表情で言う。
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