暁 〜小説投稿サイト〜
アドリアーナ=ルクヴルール
第一幕その七
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
話みたいだね」
 庶民は口に手を当てながら言った。
「それどういうこと?」
 庶民の言葉に姫君が尋ねた。
「うん、実はザクセン伯って公爵の奥方の愛人だって噂があるんだ。実際二人でよくお会いしているしね」
「あ、その話聞いたことがあるわ」
 女神がその話に突っ込みを入れた。
「何でも公爵夫人がハンサムな伯爵にえらくお熱だとか」
「へえ、そうだったんだ。僕は伯爵とアドリアーナのことは知っていたけどね」
 大臣がその話に頷いた。
「あ、皆隠れましょう。誰か来たわよ」
 四人はサッと部屋の片隅に身を隠した。見れば公爵と僧院長が部屋に戻って来たのだ。
「別荘に行ったのじゃなかったのかしら」
 女神がそれを見て首を傾げる。
「見て。もう一人誰かいるわ」
 姫君が公爵と僧院長の後ろについてきている男を指差して囁いた。
「いいな、ではこれを右から三番目のボックスにいる殿方に手渡してくれ」
 公爵はその男に対して手紙を手渡して言った。
「あれは照明の新入りじゃないか」
「あいつまた頼まれて断れなかったな」
 男優二人が苦笑しながら言った。
「わかりました」
 新入りは少しオドオドしながら応えた。どうもあまり気の強い男ではないらしい。
「よし、ではこれはチップだ」
 公爵はそう言うとひとかけらのエメラルドを彼に手渡した。気前はいい。
「あ、有り難うございます」
 彼はそれに頭を垂れるとすぐにその場を去った。そして観客席へ向かって行った。
「これでよし。まさか途中で思わぬ協力者が出てくれるとはな」
「公爵、買収は協力者と言わないのでは」
「おっと、そうだったかな。ハハハ」
 彼はそう言うとカラカラと笑った。そして二人はその場を後にした。
「どうやら本格的に面白い事になりそうね」
「一体どうなるのかしら」
 女優達は楽しそうな顔で言った。
「これは凄いことになるかもね」
「お二人にとっては可哀想なことになりそうだけれど」
 男優二人も彼女達と同じく楽しそうな表情で言う。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ