第一幕その五
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ショネはその言葉にさらに尋ねた。
「あの方が無事かどうか」
「あの方とは?」
「私のナイト・・・・・・」
「ナイト・・・・・・?」
ミショネはその言葉に不吉なものを感じた。
「けれど今日帰って来ました」
「今日ですか?」
「はい、今日です」
アドリアーナは話すうちに次第に明るくなってきた。ミショネはその逆であった。
「それでもずっと心配だったんです。これからもそうですが。けれどミショネさんにお話して胸の怯えが消えました。あの人は今生きているから今のあの人を愛せばいいと。そう思いました」
「そうですか・・・・・・」
ミショネはその言葉を聞いて肩を落とした。だがアドリアーナはそれに気付いていはいない。
「彼はサクソニア伯爵の旗手を務めているんです。そして彼はポーランド王、ザクセン選帝候の勇敢なご子息・・・・・・」
当時ザクセン選帝侯はポーランド王も兼ねていた。そして欧州において権勢を誇っていたのである。
「彼が戦いに出た後行方が途絶えていましたの。ところが昨日あの方にお会い出来て・・・・・・」
アドリアーナの顔はそれだけ言うともう恍惚としていた。
「そうですか・・・・・・」
彼は肩を落としたまま呟いた。アドリアーナは恍惚としたままなのでまだそれに気付いていない。
「それで今日私の舞台を見に来るんです」
「それはよかったですね」
「そう思うでしょう!?」
「はい・・・・・・」
彼はそう言うと後ろを振り向いた。
「結局私の運命はこんなものさ」
彼は自嘲気味にそう呟いた。
「ミショネさん、私は幸福だと思いませんか!?」
「はい・・・・・・」
彼女は上機嫌でミショネに問う。彼はそれに対して力無く頷くだけである。その時奥から合図の音がした。
「合図か・・・・・・」
彼は肩を落としたまま戸口の方へ向かった。そしてその向こうへ消えていく。その時頬を服の袖口で拭いたがアドリアーナはそれには気付かなかった。
アドリアーナは暫く練習を続けていた。すると役者用の戸口から一人の若者が姿を現わした。
ザクセン軍の将校の軍服を着ている。引き締まった長身の若者だ。豊かな金髪に青い瞳を持つ美男子である。彼こそザクセン選帝候の子でありアドリアーナの想い人であるマウリツィオである。
子といっても庶子である。ザクセン候には多くの庶子がおり彼もその一人であった。だが武勇に秀で父に愛されザクセン伯に任じられていた。戦場においてはその知略で知られている。
「アドリアーナ」
だがそんな彼も戦場を離れては恋をする一人の男に過ぎない。恋人の姿を認め駆け寄る。
「マウリツィオ」
彼女もそれに気付いた。そして彼を迎え入れ抱き締める。
「やっとここまで来れたよ」
彼はアドリアーナを抱き締めながら熱い声で言った
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