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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
閑話 死者(四者)は何を夢想するのか
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ルフレート】

―――ラインハルト執務室―――

記憶にある情景である意味一番馴染み深かったのはこの執務室であると長く生きていて彼はそう思った。今目の前に写る光景は夢であると理解している。何故なら彼は先ほど第八の贄となったのだから。

(そう言えば死者は夢を見るのだろうか?)

結局のところ此処が本当に夢であるかどうかは彼自身には判断できない。多分夢じゃないかと勝手に彼が判断しているだけに過ぎないのだから。

「それにしても……思えば遠くに来たものだ」

呆然としながら使い古されているであろう言葉を呟く。六十年以上前に多くの時を過ごした場所を見て染み染みとアルフレートはそう感じていた。
力を得たのは何時だったか。それ以前に力を持っていると認知したのだ何時だったのか。

「魔業、魔導、聖遺物、術式そんな身に余るであろう代物を使い出したのは何時からだ?」

元々数多くの事を知っている(・・・・・)アルフレートは己の生に疑問を浮かべることなど多々あった。記憶などという曖昧なものではない。知識という記録でもない。情報という端末ですらない。だが、それらの出来事を知っているのだ。
しかし、その度に彼にとってはそれは如何でもいいことだと感じている。ラインハルトとメルクリウス。彼等の願いが叶うというのならば彼にとっては力は幾ら有っても構わないのだ。

「そう、例えそれが悪魔の業であったとしても最早僕に止める術は無いし、元より止めるつもりも無い」

彼の持つ聖遺物はメルクリウスによって(もたら)されたものではない。メルクリウスと会う前、正確には彼と会う直前に思い出すかのようにそれは現れた。影、或いは闇。便宜的にその聖遺物はそう言われているのだ。その本質は彼自身ですら知らず、理解の範疇を超えたものであると知らされている。
触れようとすれば狂う事となる。だからこそ彼はそれに出来るだけ遠ざかるであろう聖を詠唱として置いた。十全足る能力の発揮こそないが同時に暴走も起きることはない。僅かに有り得るかも知れない流出位階に至ることのある可能性を全て潰すことで、それの本質をそれ自身に押し付けているのだ。

「だがまて。どうやって僕はそれを知り、どうやってそうすることを選択した、いや出来たんだ?」

触れれば狂う、それは触れなければ狂うなどという事前情報が無ければならない。初めから彼の内に存在したそれを他者を使って確かめることが出来ない以上、彼はどのようにしてもそれが如何いう物であるかを知るには触れるしか無い筈なのである。
にもかかわらず知っていた。それが意味すること、それは即ち……

《知りえる機会があった。それだけに過ぎない》

「如何言うことだ。何時それを知る機会なんて得たんだ?それに僕は如何して彼等を従えていた?」

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