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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
閑話 死者(四者)は何を夢想するのか
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陰だ。身体だけでなく銃も使っての反動によって脚を掠める程度にとどめた。

「クソ野郎がッ、撃て!撃ち殺せ!!」

同業者の一人がそう叫び殺されなかった同業者が闇雲に撃ち始める。だがそれらは一発たりとも中てるどころか目標を捉えることさえ許さない。そうして聴こえたのは同業者の悲鳴と銃声、そして敵の嗤い声だった。

「アハハハ!遅いんだよッ!!」

声からして少年のそれ。ご同類かとも思ったが桁が違う。俺は凡そ現実的に造れる限界値の身体能力を持ったものだが明らかにアレはそんな限界を超えた異常なものだ。

「君が速いんだろ…ッと!」

唯一対抗できる異常は俺の持っている超直感のみ。勘で捉えた敵が迫っていることを認識して右手に銃を構え放ち、左手にナイフを掴んで断ち切ろうとする。しかし、

「ヘェ?」
「!?」

銃もナイフも当たることなく俺の目の前まで来て立ち止まる。予想通り俺と然して変わらない年齢の少女のようにも見える美少年、狂喜に歪めた満面の笑みを浮かべるその姿は右目の眼帯が酷く目立つ。

「君、今僕を殺そうとしたよね?さっきの奴等みたいに適当に撃ってたわけじゃないみたいだね。でもさぁ、僕を殺そうとしたってことは僕に殺されても文句言えないよねエェ―――!!」

瞬間、視界に納めていたはずの相手は見失い、絶句すると同時に打っ飛んだ快感を覚える。

「クハッ、ハハハハッ――――――!!」

これだ、これなのだ。強者との戦い。圧倒的不利な状況に如何にして相手を打ち倒すか。考えただけで絶頂しそうになった。

「ハハ、最高だよッ!まさに此処は失楽園って事かァ―――!」

拳銃だけでなく、古びた手榴弾を殴りつけるように投げ叩き、腰に差してある投げナイフを飛ばす。そして爆音と同時に俺は死戦場へと駆けた。

******

結論を言えば敗北。こちらの攻撃など苦ともせず一方的に蹂躙された。半ば崩れ、燃え上がる(・・・・・)建物と上半身と下半身で二つに千切れ焼け焦げた(・・・・・)跡と共に臓物が飛び出しており、死にかけだ。特に下半身は炭のようなものになっていたのを目で確認した。まだ意識が保っているのは強化されたお陰か、人間の神秘か。どちらにせよもうすぐ死ぬことには変わりない。これまでに無くあの一時に満足すると同時にもう機会がないのかと惜しむ自分が居る。

《望むか、その魂を対価に二度目の生を?》

それもまた良いかもしれない。今このときが楽しいなら未来は要らないという自分がいるが次があるのならそれに手を伸ばすのも有りだ。

《なら契約は成立といこう。君は運が良い、何せ最後の六人目に選ばれたのだから》

死者は語らない。生者も堅く口を閉ざす。ならば誰が彼等の行く末を知ることが出来ようか。


【ア
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