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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十六話 死者の晩餐
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アス…最後の命令だ」

「ッ………はい、ご命令をッ」

その声は震え、口惜しさを感じさせるものだったが愛した人の為にと最後の命令を待つ。

「喰らえ、そして討て。それだけだ」

何を、そして誰を討つのかを瞬時にパシアスは理解した。喰らえというのはアルフレートを、討てというのは藤井蓮を、自然と刺した張本人であるカリグラなどの事は思い浮かばすパシアスはアルフレートの意図を履き違えずに解していた。だが、だからといってその命令を聞けるかいえば少なくともパシアスに関しては否だった。

「貴方を……愛した貴方を他ならぬ私の手で喰らえと、奪えと、そう仰るのですか?無理です。そんなこと私には出来ません。貴方をこの手で失えなんて……そんなこと私には出来ないッ!」

愛してるが故にその命は聞けなかった。討つということに関してなら別段構わない。だが彼女にとって総てと言っても過言でないアルフレートを自らで喰らうなどと言うことは出来ないと。アルフレートはそれを見ながら面倒だと思う。
いつもいつもどんな言葉を掛けようとも曲解して自分を大切に思ってくれていると思い込む。直接的な拒絶を見せれば自分の殻に閉じこもる。畜生にも劣るんじゃなかろうかと時々本気で考えたりもしていた。そしてそれはあながち外れてはいないともアルフレートは思っていた。

「君が六十年たって未だに愛しているというなら尚の事喰らえ。君の本質は喰らうことだ。なら僕を喰らってその愛を示せ。そうすれば永遠に僕は君と言う存在の内で君の愛に答えよう」

嗤いながらアルフレートは思う。愛する気など欠片も無いのによくもまあ嘘八百並べれるものだと。しかし、パシアスの方はその言葉を聞き、曲解を終え自己完結したのかアルフレートを喰らうことを決心していた。

「絶対に、絶対に何時か貴方を救ってみせるわ。だから今だけ……さよなら」

(ああ、さよならだ。尤も今だけじゃなく永久にだろうがね。ようやくこの七面倒な世界で繋がりを創り上げたんだ。もう俺は(・・)この世界の住人に用は無いよ)

そしてアルフレート・ヘルムート・ナウヨックスはこの世界で死を迎えた。


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