第五十一話 トライアングラー
[1/10]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第五十一話 トライアングラー
まずはだ。シェリルから話してきた。
「どうしてなのかしら」
「どうしてとは?」
「どうしてランカのマネージャーになったの?」
問うのはこのことだった。
「それに私を病院に閉じ込めて。どういうつもりかしら」
「それね」
何でもないといった口調だった。
「そのことなのね」
「そうよ、どうしてなのかしら」
こうグレイスに問うのだった。
「それにランカをバジュラに使って。私じゃないっていうの!?」
「ええ」
「私じゃなくて。何故ランカなの?」
「貴女はね」
グレイスは悠然とだ。見下すようにしてそのシェリルに告げてきた。
「自分ではアーチストと思っているわね」
「ええ、そうよ」
「けれど所詮はアイドルなのよ」
こう告げるのであった。
「ランカとはまた違うわ」
「私がランカとは違う」
「そう、貴女は今まで自分一人でやってきたと思っている」
「そうよ」
その自負こそが彼女を支えているものだった。
「ギャラクシーのあの中から一人でね。違うっていうのかしら」
「あのスラムで私が貴女を見つけなかったらどうだったかしら」
だがグレイスはそのシェリルにさらに言うのだった。
「その時は」
「うっ・・・・・・」
「わかっている筈よ。あのゴミ箱を漁っていた貴女を私が見つけて」
その時の記憶がだ。シェリルを襲っていた。
「そして今に至るわね」
「けれどそれは私の歌が」
「ではもう一つ言うわ」
言おうとするシェリルを遮っての言葉であった。
「貴女は私が拾った後暫く入院していたわね」
「スラムで弱っていた身体を回復させる為だった筈よ」
これはシェリルの記憶の中でそうなっていることだ。
「違うというの?」
「違うわ。貴女は病気なのよ」
こう彼女に告げるのである。
「そう、その病気は薬がないと生きられないもの」
「薬が・・・・・・」
「私が密かに投与してきた薬がないとね」
グレイスの口元に妖しい笑みが宿った。
「つまりわかるかしら」
「何がだというの?」
「貴女は終わりなのよ」
今度は目元も笑った。やはり妖しいものである。
「歌手としても生命的にも」
「そんな、私は」
「一人で生きるというのね」
「ええ、生きてみせるわ」
必死の顔での言葉だった。
「貴女がいなくてもね」
「どうかしら」
「見ていなさい、それをね」
こう言ってグレイスの横を通り過ぎようとする。しかしであった。
グレイスは後ろからその彼女を捕らえてだ。耳元に囁くのであった。
「甘く見ないことね」
「何ですって!?」
「貴女は私がいないと生きられない」
こう囁くのである。
「そう、そして私に捨てられた貴女は終わりなのよ」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ