第五十一話 トライアングラー
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こう言ってその場を後にしようとするミシェルだった。
「だからだ」
「それで行くのかよ」
「決めるのは御前だ」
アルトに背を向けながらまた彼に告げた。
「御前自身だからな」
「俺自身か」
「そういうことだ。それじゃあな」
これでだった。ミシェルは今はアルトの前から姿を消した。その彼と入れ替わりの形でだ。彼の前に姿を現したのは。
オズマとキャサリンはレオンの執務室にいた。そこで彼と対峙していた。
「また物騒な感じだな」
「感じじゃない」
「そのものよ」
不敵に笑うレオンにこう返す二人だった。
「クーデターとは思い切ったことを考えたらな」
「もう証拠は掴んだわよ」
「そうか」
レオンは自分の席に座ったまま冷静に応える。
「もうなのか」
「言い逃れはできないぞ」
「もうね。証拠は保存もしておいたから」
「それはわかった」
やはり落ち着いているレオンだった。
そしてだ。こうも言うのであった。
「では私が美知島中将を同志としていることも」
「無論だ」
「そしてロンド=ベルもなのね」
「如何にも。そこまで知っていたか」
「全てな」
「掴んだわよ」
「では私をどうするのかね?」
レオンはあらためて二人に問い返した。
「一体どうするのか。聞きたいものだ」
「そんなのはもう決まってるわ」
キャサリンの声は激昂したものだった。
「レオン=三島補佐官」
「うむ」
「貴方を告発します」
彼を指差しての言葉である。
「国家転覆罪、そしてテロ計画の容疑で」
「容疑ではないな」
「ええ、容疑だけれどもう全てわかっているわ」
キャサリンは強気に彼に告げる。
「何もかもね」
「宜しい、それではだ」
「もう逃げられんぞ」
今度はオズマが彼に告げた。
「大人しくすることだな」
「ふむ。それではだ」
「同行してもらおう。裁判が待っているぞ」
「極刑は免れないわよ」
キャサリンの言葉も鋭い。
「覚悟することね」
「極刑か。確かにな」
レオンは不敵な声でまた告げてみせた。
「このままではそうなる」
「観念したのかしら」
「だったらすぐに来い」
「しかし。遅かったようだ」
不敵なのは笑みもであった。
「既に計画は実行に移している」
「何っ!?」
「まさか」
「さて、はじまりだ」
レオンは不敵に笑って二人に告げた。
「これからがだ」
「何っ、まさか」
「それは」
今まさに何かが起ころうとしていた。ロンド=ベルにとってこれまた運命の大きな歯車であった。それが彼等をまた動かそうとしていた。
第五十一話 完
2010・8・22
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