第四十八話 崩れ落ちる邪悪の塔
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では」
「聞こえなかったのか、逃げるのだ」
だが皇帝はまた言うのだった。
「そしてそこで再起を図るのだ」
「は、はあ」
「左様ですか」
「そうなのですか」
最早完全に呆れ返ってしまった。どうにもならなかった。
皇帝は実際に逃げた。部屋から去る。臣下の者達は最早何を言っていいのかわからなかった。
その一万の軍がロンド=ベルに向かう。しかしであった。
ハイネルが前に出た。そうしてだった。
「ボアザンの者達よ!」
「プリンス=ハイネル!?」
「まさか。ここまで来たのか」
「ボアザンに戻ってきたのか」
その一万の兵が彼の姿を見て言った。
「そして何故ここに」
「我等の前に出て来た」
「何のつもりだ」
「知れたこと、汝等は何の為に戦う」
こう彼等に問うのだった。
「それは何故だ」
「何故というと」
「ボアザンの為だ」
「違うというのか」
「そうだな、ボアザンの為だ」
ハイネルもその言葉には頷いた。
「しかしだ」
「しかしだと」
「どうだというのだ」
「何が言いたい」
「皇帝ズ=ザンバジルは何だ!」
彼のことを言うのだった。
「あの男は何だ!」
「皇帝ではないのか」
「そうだ、それ以外の何でもない」
「今更何を言うのだ」
「そもそも御前は逆賊ではないのか」
「いや、逆賊はズ=ザンバジルだ」
また言い返すハイネルだった。
「あの男こそがだ。ボアザンに対する逆賊だ!」
「何っ、陛下が賊だと!?」
「それはどういう戯言だ!」
「正気なのか!」
「あの男は今まで何をしてきた!」
言いながらだった。ゴードルの右手にある剣で前を指し示した。そこには宮殿があり異様なまでに高く聳え立つ黄金の塔があった。
「その塔は何だ!」
「何を言うか、ボアザンの誇りだ」
「ボアザンの塔だ」
「陛下が築かれたな」
「それはあの男が己の為に建てさせたものだ」
塔を指し示しながらまた言うのだった。
「多くの民の血と汗と命を搾り取ってだ」
「それだというのか」
「あの塔が」
「そうだ、あの男は己のことしか考えておらぬ」
そしてだ。こうも告げた。
「何故今この戦場に姿を現わさぬ!」
「!!」
「それは」
「そうだな。あの男は逃げた!」
ボアザンの兵達に話す。
「そなた等を見捨ててだ。己だけが逃げたのだ!」
「まさか、そんな筈がない」
「陛下が国を見捨てるなぞ」
「有り得ないことだ」
兵達はハイネルの言葉を信じようとしなかった。しかしだった。
ここでだ。宮殿の中から臣下の者達が言う声が聞こえてきた。
「陛下、お一人だけ逃げられるとはどういうことですか!」
「一体何処に行かれるのですか!?」
「港も既に占領されております!」
「それではとても
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