第四幕その六
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は尋ねた。
彼女は暖炉を指し示した。そして言った。
「もう燃やしてしまったけれど。見ているとあまりにも辛いので」
腕の動きが鈍くなりだしている。
胸元が苦しくなった。その苦痛を庇う様に両手を胸に置いた。
「大丈夫かい?」
「ええ」
彼女は答えた。口ではそう言っても次第に苦しさが増してきている。
彼を見つめた。その黒い瞳が次第に潤んでくる。
「何故そんなに僕を見ているんだい?」
「いえ・・・・・・」
急に目の前が暗くなった。何も見えなくなった。
「え・・・・・・今私は何処にいるの!?」
「な、何を言ってるんだい!?」
マウリツィオはその言葉に驚いた。
目の前が再び明るくなった。しかし何かが混乱している。
「私・・・・・・今何を話していたのかしら」
「アドリアーナ・・・・・・一体何を言ってるんだい!?」
マウリツィオはそんな彼女を落ち着かせようとする。だが彼女はそんな彼を見て言った。
「貴方は何を言っていたの?・・・・・・いえ、その前に」
アドリアーナの視界が再び暗転した。
「貴方は・・・・・・何処にいるの!?」
「待ってくれ、僕は今ここにいるじゃないか、君のすぐ側に!」
「いえ、いないわ」
視界が戻った。だがそこに映るのは別のものだった。
「貴方はあの桟敷にいるのよ」
彼女はそう言って微笑んだ。
「桟敷・・・・・・。君は何を言っているんだ」
「この大変な混雑した席に。折角だからボックスに入ればいいのに。・・・・・・けどいいわ」
彼女の視線は虚ろである。既に目の前には何が映っているか自分でもわかっていないのであろうか。
「側で私を見たいのなら」
「アドリアーナ、アドリアーナ!」
彼女の両肩を掴んで必死に揺さぶる。だが反応は無い。
ただ虚ろに何処かを見ているだけである。
「大変だ・・・・・・」
彼女から手を放し机の上に置かれていた鈴を鳴らした。そして使用人を呼んだ。
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