第四幕その五
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を出した事を後にどう思ったであろうか。喜劇も悲劇も人が作り出すというのは事実である。そしてそれがもたらす喜び、そして悲しみもまた現実なのである。これは非常に残酷な話であるが。
「・・・・・・そしてその奇跡とは?」
アドリアーナは彼に尋ねた。
「私は伯爵に手紙を書きました」
先程使用人に持たせたあれである。
「手紙を?」
「はい。いらぬお節介でしたか?」
「いえ・・・・・・」
アドリアーナはその言葉に対し首を横に振った。
その時屋敷の玄関の方から馬の嘶きが聞こえてきた。
「お、来られましたよ」
彼はあえて彼女にも聞こえるように声を弾ませて言った。
「そんなことが・・・・・・」
彼女は顔を起こした。その瞳はまだ涙で濡れている。
「ところが起こるのです。それが奇跡というものです」
ミショネはそんな彼女の顔を見て微笑んで言った。
「アドリアーナ!」
マウリツィオの声がした。
「聞こえましたね。あの声は忘れられた事はない筈ですよ」
「いえ、違うわ。これは私の幻聴なのだわ」
彼女はまだ信じられない。
「ではこれから貴女が見るものは幻覚ですかな?」
ミショネはそんな彼女を少しおどけた調子で言った。しかしその顔はやはり優しいままである。
足音が近付いて来る。それはアドリアーナにも聞こえている。
一歩一歩近付いて来る。そしてそれは扉の前に来た。
「あの人が来られるのね!」
「そう、やっと信じる事が出来ましたね!」
ミショネはそれを見て満心の笑みで言った。
「はい、もうこうしてはいられません!」
彼女は立ち上がった。そしてドアの方へ向かいそのドアを大きく開いた。その向こうにはマウリツィオがいる。
「これでいい、これでいいんだ、これで」
ミショネはそう言うとその場を去った。そして一人食堂へと入って行く。
マウリツィオが部屋に入って来た。息は大きく弾んでいる。
ドアの前で待っていたアドリアーナは彼を抱き締めようとする。だがハッとして立ち止まった。
「何故ここに・・・・・・!?」
アドリアーナは恨みを込めた声と眼差しでマウリツィオに言った。
「・・・・・・許してくれ」
マウリツィオは罪悪感に捉われ下を向いて言った。
「・・・・・・・・・」
アドリアーナは沈黙した。だがその眼は恨みを込めたままである。
「気の迷いだった。僕が馬鹿だった」
「あちらであのお方がおられてもそれが言える?」
アドリアーナはそう言って彼を見た。問いかける眼で。
「今の僕は君だけが全てだ。信じてくれ」
「それは前にもお聞きしました。もう何度も何度も」
「それは謝る、だから許してくれ」
「けれどまたあの人のところへ行ってしまわれるのでしょう!?また今度も」
「それは無い、僕のこの
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