第三幕その七
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いた。
公爵夫人はまだ怒りで震えている。そしてようやく心の中で呟いた。
(この怒り、必ず晴らしてやるわ・・・・・・)
そう呟くと隣にいるマウリツィオを見た。
(そして彼を必ず・・・・・・)
彼に声を掛けた。
「伯爵」
怒りを必死に覆い隠して彼に言った。
「はい」
彼も公爵夫人の怒りは知っている。それをあえて知らないふりをして答えた。
「宴の後こちらに残って下さいますか。お話したい事がありまして」
「わかりました」
彼はそれを承諾した。彼女の怒りを抑えなければならないのと政治的な理由からだ。やはり彼にとっては政治は常にその心を占めているものであった。
アドリアーナはもうこれ以上ここにいる気はなかった。公爵の方へ行くと頭を垂れ申し出た。
「用件がありますのでこれで」
「私も」
ミショネもそれに従った。公爵はそれを承諾すると彼女に腕を貸した。
アドリアーナは客人達の挨拶を受けその場を去った。広間を出る時彼女はマウリツィオの方を振り向いた。
「・・・・・・・・・」
彼と目が合った。彼は何も言わない。だがその心はわかった。
彼女は寂しげな目をして前へ向き直った。そして広間を後にした。
公爵夫人はそれを黙って見送っていた。その瞳は怒りに燃えた憎しみの眼差しであった。
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