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戦国御伽草子
弐ノ巻
輪廻

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「ありがとう。あたしがすればよかったかな。いつもの癖で、つい兄さんに頼ってしまうわ」



 あたしは霊力をつかおうとした。けれど、何の手応えもない。



「…真澄にはあるのに、あたしに霊力はないの?」



「今の真秀にはないよ。真秀は僕の甦りを願う時、僕の身を守れるくらいの霊力を(あわ)せて流し込んだんだ。逆に真秀は自分が死ぬ時霊力の潰えを願った。だから僕だけ使えるんだ。覚えてる?」



「覚えて、ないわ…ただ悲しくて…必死だったから」



 思い出すと、胸が心臓を握りつぶされたかのように痛む。



 あたしは真澄を救うことができず、この手で殺したのだ…。



「もうあんな思いはしたくない。あたしたち、ちゃんと(よみがえ)ったのよね?幸せになるために…」



 言いながら語尾は小さく消えた。何の因果か、瑠螺蔚(あたし)兄上(ますみ)は、実の兄妹として生まれてしまった。母も、今度は父も同じ…。



 瑠螺蔚(あたし)は、兄上のことを恋愛対象としては一切見ていなかった。同母(いろ)の兄妹として生まれた以上仕方がないけど…。



 それでも、あたしにとって誰より大切な人なのは変わらない。



「真秀」



 その言葉と同時に強く抱きしめられた。



 触れた身体は、氷のように冷たかった。



「真澄!」



 あたしは思わず声をあげた。



「きっと目覚めたらすべて忘れてしまうだろうけど、命を費やしても最後に思い出してほしかった。この、一瞬の間だけでも」



 真澄は笑った。儚い笑みだった。真澄は、何かを覚悟している。なにを?



 笑顔を浮かべるあたしの頬が引きつる。



「な、に言ってるの?命って、最後って、真澄…」



「真秀、僕はいつでも真秀の幸せだけを願っている。忘れないで」



 額に真澄の唇が触れた。それが頬を辿り、あたしの唇と重なった瞬間、身体が引っ張られるような浮遊感に包まれた。霊力!



 真澄はあたしを翔ばそうとしている!



 あたしはそう直感した。



 ここで離れたらもう二度と会えない思いに駆られて、必死で真澄の着ていた濃緑の衣を意識してしがみつく。



「やめてーーーーー!真澄!」



(真秀。僕の身体はもう、持たない)



 あたしの意識も朦朧としてきた。淡々と聞こえるその声すら、薄い(もや)の向こうから聞こえてくるようでしかない。



「嘘!」



(本当だよ。霊力の限界を
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