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アドリアーナ=ルクヴルール
第三幕その四
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王子である。彼はある時一つの審判を神々より委ねられた。それは女神達のうちどの女神が最も美しいか、という話である。
 審判してもらうのは三柱の女神達。女性の守護神ヘラ、知と戦の女神アテナ、そして愛と美の女神アフロディーテ、すなわちヴィーナスである。
 これは正直極めて難しい判定であった。しかも女神達は自分を選んでくれたならば褒美を与えようというのである。その褒美はどれも極めて魅力的であった。その為彼は悩んだ。
 だが彼はヴィーナスを選んだ。何故ならこの女神が自分に最も美しい女性を与えてくれると言ったからである。
 これがトロイア戦争のもとになる。ホメロスの詩に名高い十年に渡る戦いである。神々がトロイア、ギリシア双方に分かれ英雄達が血を流した。そして多くの悲劇を生み出した戦争であった。
 この劇ではまず二人の従僕が幕を引いた。するとそこに小さな村と海の背景が出て来た。
 そこに羊飼いの服装を着たパリスに扮する役者が現われる。彼は土手に寄り掛かった。遠くから羊飼い達の笛の音や歌い声が聴こえて来る。
 するとそこにキューピット達がすがたを現わした。そしてパリスに言う。
「目覚めてはいけませんよ、羊飼いよ。恋は甘い破滅のもと。貴方はそれの虜になる運命。だからそのまま眠っていなさい」
 彼等はそう歌うとその場を去った。するとそこへ商業の神ヘルメス、すなわちマーキュリーが現われた。
 そしてパリスを起こす。目覚めた彼に懐から取り出した一個の黄金の林檎を与えた。
「これは・・・・・・」
 パリスは尋ねた。マーキュリーは彼に言った。
「君はその林檎を最も美しい人に授けるのだ」
「最も美しい人?」
 彼は尋ねた。

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