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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第54話 炎の契約者?
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西王母の七番目の娘の伝説に伝えられている通り、脈脈として語るを得ず。つまり、黙って見つめるだけで、何も語ろうとはしなかった。

 しかし……。

 俺の方に向けて、右手を差し出して来る湖の乙女。その手の平の上に置かれている、大粒の蒼い石を使った指輪。
 ただ、その指輪は、明らかに何らかの巨大な霊気を帯びた魔法のアイテムで有る事が判る。

「私の宝物。アンドバリの指輪を、貴方に預かって欲しい」

 彼女が、その指輪を差し出した瞬間、この場に居るタバサ以外の少女たちから、陰と陽の入り交じった微妙な気が発せられる。
 ブリギッドの方は陽が勝ち、モンモランシーの方は陰が勝つ。

「その指輪は……」

 もし、湖の乙女が差し出す指輪が、俺の知って居る伝承上に存在するアンドバリの指輪に等しい魔法のアイテムならば、この指輪を俺が持つ事に成る俺の運命は……。
 破滅への道を歩む事となる。

 但し、こう言う伝承も有る。アンドバリの指輪は持ち主をワーム……。つまり、東洋産の龍と同じ姿形に変える能力を持つと言う伝承も。

「シノブさんが受け取る必要は有りません。その指輪に籠められている魔力は、貴方と、そして、彼女も不幸にします。
 強すぎる魔力を帯びた呪具は、持つ者を不幸にしかしません」

 モンモランシーがそう言った。そして、彼女が陰の気を発した理由は、理に適っています。
 人間に取って、分に過ぎた魔力(ちから)は身を滅ぼす元に成りますから。

 ただ、モンモランシーが彼女と言った相手は、タバサではなく、湖の乙女の方のような気もしたのですが。

「問題ない。炎の契約者に成る人間が、その程度の魔力の籠った呪具により身を滅ぼす訳はない」

 逆に、ブリギッドの言葉はこれ。そして、彼女の目的。俺を見極めると言う行為に置いては、巨大な霊力の籠った呪具ひとつ持つ事さえ出来ない相手では、彼女の眼鏡に適うとも思えませんから。

 俺は、湖の乙女を見つめる。
 その彼女は……。湖に関係する女神に相応しい瞳に俺を映し、彼女からは俺に対する悪意の類を感じる事は無かった。
 ……彼女が、俺を貶めても意味は有りませんか。

「判った。オマエさんの宝は俺がしっかり預かって置く」

 差し出されたアンドバリの指輪を受け取った瞬間、静電気にも似た奇妙な反応を感じたのですが、しかし、それだけ。それ以上は、別に不都合な事もなく、また、特別に何かを感じる事も有りはしませんでした。

 俺にアンドバリの指輪を渡した後も、ただ、真っ直ぐに俺を見つめるだけで、何も語る事の無い湖の乙女。
 その瞳は、まるで失った時を埋めるかのような雰囲気を発し……。

 但し、俺は彼女の知って居るのは俺では有りません。それは、今の俺では無い、かつて、
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