第5章 契約
第54話 炎の契約者?
[7/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
も、属性は冬。全体的に雪の人形めいた印象を持たせるのは、その肌の白さかも知れない。
いや、双方が交わすその視線と、そして、共に精神を表現する事のない透明な表情が、より精緻な人形を思わせて居るのでしょう。
そうして、彼女の目の前に、右手の手の平を上にした状態で差し出す湖の乙女。その手の平の部分から浮き上がる、直径にして三センチメートル程度の光の珠。
珠は眩しいばかりの光輝を放ち、そのまま、手の平から、大体三十センチメートル程の高さを滞空する。
その中に浮かぶ、『希』の文字。
「これは、如意宝珠?」
俺の問い掛けに、少し首肯く湖の乙女。これは、間違いなく肯定。しかし、もし、本当に如意宝珠ならば、龍種ではないタバサには、そのままでは扱えない宝貝なのですが……。
龍種専用の宝貝を、それ以外の人間が扱えるようにするには、如意宝珠を起動させるのに必要な珠。それぞれの、属性に応じた珠で宝珠自体を包む必要が有ります。
タバサは、おそらく水行ですから、水属性の珠で……。
少し逡巡した後、そっと右手を差し出すタバサ。その彼女の周りをまるで、彼女を見極めるかのように、数度、周回した宝珠が、彼女の差し出した手の平に沈み込むようにして消えて行く。
そう。如意宝珠とは、意志を持つ宝貝。その持ち主を認めない限り、例え、その人間が宝珠を使用出来る存在で有ったとしても、絶対に言う事を聞く事は有りません。
そして、タバサの手の平の内に消えて行ったと言う事は、彼女は、如意宝珠『希』に、自らの主に相応しいと認められたと言う事。
ただ……。
「湖の乙女。いや、オマエさんは、ミーミルでも無ければ、ヴィヴィアンでもない。河伯、もしくは洛嬪と呼ばれる存在なのか?」
俺は、そう彼女に問い掛けた。尚、河伯、洛嬪共に、仙族に属する河を守護する神さまの事です。
それに、彼女には、もう一人。より彼女に相応しい、そして、河に関係した女神が存在していましたか。
「それとも、西王母の七番目の娘。紫色の髪の毛を持ち、七夕の夜に地上に降りて来て牽牛と出会った織姫……」
彼女、湖の乙女が答える前に、質問を続けた。
それに、今宵は、地球世界の暦の上では、七月七日。この夜の出会いすら、何らかの神話の追体験で有ると考えるのならば……。
まして、二度目の出会いの時に、彼女は言って居ました。
「出会いは、一千一夜の前の約束」 ……だと。
約束。神や、その他の訳の判らない、俺達人類から見たら上位者に等しい連中が決めた役割に従って、手持ちの駒の如く操られた結果の出会いなどではなく、約束。
真っ直ぐに、俺を見つめる湖の乙女。ただ、彼女の事……
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ