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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第54話 炎の契約者?
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 俺の言葉に、ブリギッドが首肯く事に因って、この誓約は為された。そして、これから先に俺の為した事は、世界にあまねく存在している精霊たちに因ってブリギッドに伝えられるように成ると言う事でも有ります。

 但し、裏を返せば、何か危険な事が有れば、彼女の助力を得る事も容易くなったと言う事でも有ります。
 ポジティブに考えるのならばね。



 そして、少し賑やかな時間が過ぎ去り、本来の時間帯に相応しい静寂が、世界を支配した。
 聞こえて来るのは、悠久の時を超えて寄せて来る波の音と、遙か西から吹き寄せて来る風の息吹のみ。

 そして、夜明け前の空が、刻一刻とその様を変えて行く。
 一時間前までは、確かに、濃紺と呼ばれる色に染まった空と、散りばめられた星々。そこから下界を見下ろす二人の女神に因って支配されていた世界が、今では……。
 濃紺と呼ばれていた色合いから、黎明、払暁と呼ばれる時間帯の、東の方角が徐々にオレンジに近い明るさを発し始める薄明の時間帯。

 一日で二度訪れる、世界が変わる瞬間。夕闇迫る時間が、誰そ彼(たそがれ)ならば、彼は誰(かはたれ)と呼ばれる、薄明りに包まれた、空がもっとも美しい時間帯。西に目を向けると、其処には未だ闇の気配が。其処から遙か高見へと視線を移すと、其処には濃い青の残滓を感じ、そして更に東に目を転じると、其処にはこれから訪れる赤に至る紫と表現すべき色合いが存在する。

 タバサを少し見つめた俺に、彼女が小さく首肯いて答える。ならば今晩、ここで出来る事は終わりですか。後は、リュティス(王都)に帰ってから一休みして、そして仕事の完了の報告をイザベラに行うだけです。

「なら、ブリギッド。湖の乙女とモンモランシーを見送った後で良いのなら、火竜山脈まで送って行こうか?」

 時刻的には現在、夜中から明け方に至る午前三時すぎ。もうすぐ夜が明けますが、火竜山脈ならば一度行った事が有るので魔法で瞬間移動が出来ますし、その他の二人。モンモランシーと湖の乙女は、自宅が直ぐ傍ですから見送る必要は有ると思いますが、わざわざ、送って行く必要はないでしょう。

 しかし……。
 湖の乙女が俺をその澄み切った湖にも似た瞳に映す。その視線は冬の属性を得ていながらも、何か言いたげな。何かを伝えようとする雰囲気を発して居る。
 これはおそらく、

「もしかして、未だ何か用が有ると言うのですか」

 ただ、何故か、彼女に対する違和感が、彼女の事を湖の乙女と呼ぶ事も、そして、ヴィヴィアン。更に、ニミュエ、エレインと呼ぶ事も躊躇わせて居るのですが……。
 少し、考える様子の湖の乙女。しかし、直ぐに首肯いた後、俺ではなく、俺の右隣に居るタバサの方に向き直る。

 共に並べば、本当に良く似ている二人。どちら
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