第三幕その二
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=ルクブルールが来ますよ」
その名を聞いて客人達はおおっ、と声をあげる。
「劇は『パリスの審判』、そしてシャンフルールのバレエです」
「おお、それは楽しみだ」
僧院長の話を聞いて公爵は思わず声をあげた。
「お客様と奥様の為に容易しましたよ」
僧院長は右目を瞑って彼女に言った。
「あら、それはあの大女優の為でしょう」
公爵夫人は少し皮肉を込めて言った。彼も夫も彼女のファンであることを皮肉ったのだ。
「おや、これは手厳しい」
僧院長はその言葉に思わず苦笑した。程無くして家令が告げる。
「アドリアーナ=ルクブルールの来場です!」 116
その言葉に一同オオッ、と声を挙げる。するとミショネに付き添われ彼女が入って来た。
赤と金のドレスを着ている。美しく飾られたその姿はまるで女神のようである。
「まさにミーズだな。いや、太陽か」
僧院長はその姿を見て呟いた。
「さあ、こちらへ。その美しいお姿をもっと近くで拝見させて下さい」
公爵はそう言って彼女を近くへ招き寄せる。
「そのような・・・・・・」
公爵の言葉にアドリアーナは戸惑っている。その声を聞いた公爵夫人の顔色が変わった。
「その声は」
あの別荘での声によく似ている、と思った。
「私はここへ招かれて感激致しました」
アドリアーナはそんな彼女の言葉には気付いていない。勿論彼女のことは知っている。忘れる筈もない。だがそれは心の中にしまっておいているのだ。
しかしその声を公爵夫人は覚えていたのが仇となった。さらに声を聞いて公爵夫人は確信した。
「間違い無いわ、あの声ね」
アドリアーナを見る。彼女は公爵夫人からあえて視線を外している。
「そのうえこれ程まで手厚いおもてなしをして下さって・・・・・・」
アドリアーナは本心から感激していた。それが公爵夫人には余計面白くないようだ。
「あんなに喜んで、何と憎らしい」
彼女はアドリアーナを横目で見つつ呟く。その声は公爵にもアドリアーナにも聞こえない。半ば心で呟いているからだ。
「それにしてもまさか彼女だったとは」
アドリアーナを横目で見続け考える。
「想像もしなかったわ」
「女優とは」
アドリアーナは優雅な声で語りはじめた。
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