暁 〜小説投稿サイト〜
アドリアーナ=ルクヴルール
第三幕その二
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
=ルクブルールが来ますよ」
 その名を聞いて客人達はおおっ、と声をあげる。
「劇は『パリスの審判』、そしてシャンフルールのバレエです」
「おお、それは楽しみだ」
 僧院長の話を聞いて公爵は思わず声をあげた。
「お客様と奥様の為に容易しましたよ」
 僧院長は右目を瞑って彼女に言った。
「あら、それはあの大女優の為でしょう」
 公爵夫人は少し皮肉を込めて言った。彼も夫も彼女のファンであることを皮肉ったのだ。
「おや、これは手厳しい」
 僧院長はその言葉に思わず苦笑した。程無くして家令が告げる。
「アドリアーナ=ルクブルールの来場です!」 116
 その言葉に一同オオッ、と声を挙げる。するとミショネに付き添われ彼女が入って来た。
 赤と金のドレスを着ている。美しく飾られたその姿はまるで女神のようである。
「まさにミーズだな。いや、太陽か」
 僧院長はその姿を見て呟いた。
「さあ、こちらへ。その美しいお姿をもっと近くで拝見させて下さい」
 公爵はそう言って彼女を近くへ招き寄せる。
「そのような・・・・・・」
 公爵の言葉にアドリアーナは戸惑っている。その声を聞いた公爵夫人の顔色が変わった。
「その声は」
 あの別荘での声によく似ている、と思った。
「私はここへ招かれて感激致しました」
 アドリアーナはそんな彼女の言葉には気付いていない。勿論彼女のことは知っている。忘れる筈もない。だがそれは心の中にしまっておいているのだ。
 しかしその声を公爵夫人は覚えていたのが仇となった。さらに声を聞いて公爵夫人は確信した。
「間違い無いわ、あの声ね」
 アドリアーナを見る。彼女は公爵夫人からあえて視線を外している。
「そのうえこれ程まで手厚いおもてなしをして下さって・・・・・・」
 アドリアーナは本心から感激していた。それが公爵夫人には余計面白くないようだ。
「あんなに喜んで、何と憎らしい」
 彼女はアドリアーナを横目で見つつ呟く。その声は公爵にもアドリアーナにも聞こえない。半ば心で呟いているからだ。
「それにしてもまさか彼女だったとは」
 アドリアーナを横目で見続け考える。
「想像もしなかったわ」
「女優とは」
 アドリアーナは優雅な声で語りはじめた。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ