いらだち
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」
「竜太さん、まだ早いんじゃありませんか?雪乃はまだ十六ですし」
「そうだよ、パパ。雪乃にはまだ早い気が……」
「いや、今決めといたほうがいい。雪乃がこの状態でいられるかわからないんだ」
威厳のある声に女性人二人は黙ってしまう。
「じゃあ、私たちはそろそろ明日奈君のところに行こう。如月君、また今度会おう。恵子、春香、行くぞ」
そう言って本庄夫妻と春香は病室を出て行った。それを見送りもう一度ユキを見る。突然玖珂がユキの近くに行き、ベッドに座る。
「君、須郷さんから聞いたんだけど、雪乃と一緒に暮らしてたんだって?」
急にさっきとは違う話し方。こっちが本性のようだ。
「ええ、暮らしてましたよ。しかし、さっきの話しの文脈からしてあなたがユキと結婚すると言うことですよね?」
「ああ。そうだ」
普通に言った。自分の心の中で嘘であって欲しいと思っていたがそんなことはなかったようだ。手を爪が食い込むくらい握る。
「そんなことは出来ない。彼女の意思確認がない限り法的に不可能なはずだ」
「たしかにね。今の状態だったら僕が本庄家の養子になることになる。実際、雪乃は昔から俺のことをそうとう嫌ってたからこの状態が何かと都合がいいんだ。当分眠ってて欲しいね」
そう言って、ユキの腹の辺りに手を置きどんどん上に手を這わせていく。それに激怒した優は玖珂の腕を掴んでユキから引き離す。
「お前……今の状態を利用する気か!!」
玖珂は口元を吊り上げて腕を払い、言った。
「利用する?なに言ってんだ。これは正当な権利だ。なあ、如月君よぉ。いまや須郷さんのいる部署、つまり俺のところが雪乃や結城明日奈、他三百人の命を保障してるんだ。これくらいの対価を要求したっていいじゃん」
この男、今の現状どころか命までも自分の目的に利用する気なのだ。玖珂はベットから立ち、横に来ると、はっきりとした声で言い放った。
「お前が雪乃とゲームの中でなにを約束したか知らないが、今後一切来ないで欲しいね。てか、来んな。それと、本庄、結城家との接触もするな。これはお願いじゃない。命令だ」
玖珂は身体を離すと笑いを堪えるように身体を振るわせながら言った。
「式は来月この病院の一室で二人同時に行われる。お前も呼んでやるよ。じゃあな、せいぜい最後の別れを楽しむことだ。もう一人の英雄君」
そう言って肩にポンと手を置いた後、身を翻して病室から出て行った。その時にはすでに優の手は爪が食い込んで血まみれになっていた。
「チクショウ……」
優はそう呟く。そしてユキのほうを見やる。
『お前を絶対あんな奴に渡さない』
そう思って病院を後にした。
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