いらだち
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して右手でぽりぽりと面越しに頭を掻いた。直葉はその行動を心配にそうに見ていた。
「あ、頭打ったんじゃ……」
「ち、ちがう!!長年の習慣が……」
「じゃあ、俺は飯の準備しとくから、早く汗流して来いよ」
そう言って優は道場を後にした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
優はシャワーを浴び、朝食を素早く作る。手っ取り早くトーストと目玉焼き、ベーコンとサラダとシンプルな朝食を作る。作り終えたときにちょうど直葉と和人が居間に入ってくる。直葉と和人の表情はどちらも暗かった。和人の理由は、少しはわかるが直葉はわからない。
「優。飯を食べ終えたら、病院にいくぞ」
「……ああ」
優は短く答える。そして、少し暗い食卓になったしまわぬように優は話しながら朝食を取る。直葉も少しは笑ってくれたし和人は少しは元気になった。片づけを終えると優は着替えて外に出る。和人は外でマウンテンバイクにまたがって待っていた。
「早く行こうぜ」
「ああ、少し待ってろ」
そう言って優は和人のおばさんから借りているママチャリにまたがり、和人とともに所沢の郊外にに建つ最新鋭の総合病院に向かった。この病院は、優もいた場所だった。最初は、和人と同じ病院だったがナーヴギアのウィルス感染によって、ペインアブソーバがなくなったため、今まで入院していた病院では機材がなく仕方なくこっちに移動させられたのだ。ゆっくりとしたペースでペダルを踏み続け、ようやく巨大な病院の前に着く。
何回も訪れている和人は顔見知りの守衛に手を上げて門を通過する。優もこっちに来て毎日のように見舞いには来ているが和人ほどではない。巨大な駐車場の隅に自転車を止める。高級ホテルめいた一階の受付で通行パスを発行してもらい、それを和人は胸にクリップで止め、優は手に持ってエレベータに乗る。数秒で最上階に到達する。
「ユキの病室はあっちだからまた後でな」
「ああ」
そう言って優と和人は互いの大事な人の病室に向かった。ユキの病室はちょうど北側に歩き、突き当りの手前の部屋で足を止める。そこのネームプレートには《本庄 雪乃 様》、彼女の名前が書かれたスリットが走っている。一度深呼吸をして彼女がおきていることを願いながらパスをスリットに滑らせる。かすかな電子音とともにドアのロックが解除されスライドして開いていく。一歩踏み込むと花のにおいがした。
真冬にも関わらず、多くの花が飾られている。病室の奥はカーテンで仕切られていて優はその近くに寄り、彼女がおきていますようにと願いながら手を掛ける。布を引くと最先端の介護ベットで眠っている彼女が目に入る。そして、奥歯を噛み締める。その後すぐに笑顔をつくった。
「今日も来たぜ、ユキ」
優は彼女の手をそっと
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