第三幕その一
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の女の言葉・・・・・・。思い返すだけでも忌々しい」
しかし思い出さずにはいられない。そして一層激しい憎悪の炎を燃やすのだった。
「私のあの人への口付けは全て盗まれていた。あの人は今ではあの女の虜・・・・・・。私を抱いたあの手が今はあの女を抱いている」
憎悪はさらに強いものになっていく。最早それは誰にも止められなかった。
「あの声、それが全てを雄弁に言っているわ。そしてそれが私の心をさらに憎しみで燃え上がらせる」
それは彼女自身にもよくわかっていた。だがそれを止められないのだ。最早その女を見つけ出し自分の手で決着をつけないと気が済まなかった。
「奥様、どうなされたのですか。そんなに考え込まれて」
僧院長が声をかけてきた。どうやら一段落して彼女の様子に気が着いたらしい。
「いえ、何も」
彼女はそれをあえて否定した。憎しみを他の者に見せることは彼女のプアライドが許さなかった。
「それにしてもいつもお美しい」
賛辞の言葉を述べる。歯が浮くようだが当時では女性にこうした言葉を贈るのは作法のようなものであった。
「黄金色の暁よりも美しい・・・・・・」
「あら、でしたらその暁が沈んだ後はどうなのです?」
彼女は苦っぽく笑って彼に言った。幾分気が紛れたといってもやはり見知らぬあの女に対する憎悪の念が残っている。言葉の一つ一つにやはり棘がある。
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