第四十一話 潜む者達
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第四十一話 潜む者達
シェリルの部屋でだ。彼等は話をしていた。
「ギジェ」
「ああ」
「食事を持って来たわ」
こう言って彼に食事を出していた。パンにソーセージ、目玉焼き、それにサラダとスープ、コーヒーといった直食のメニューだった。
「これでいいかしら」
「済まない」
しかしギジェは手を止めていた。シェリルはそれを見て問うた。
「どうしたの?」
「むっ?」
「毒は入っていないわよ」
それは断ったのである。
「そんなことはしないから」
「入っていても構わんさ」
「それはいいの?」
「ただ」
「ただ?」
「私は敵の施しを受けてまでイデの何たるかを知りたい」
彼が言うのはこのことだった。
「その己の執着心が情けない」
「それが貴方の密航の理由?」
「既に言った通りだ」
彼はまた言った。
「イデのことを知りたいのだ」
「それを」
「そうだ、私はあまりにも失敗を重ね過ぎた」
これはバッフクランでのことである。
「しかしだ。巨神、イデオンと戦えば戦う程だった」
「興味をなのね」
「私はイデオンのこと、イデのことを知りたくなった」
「だからここに」
「そうだ。その為に生き恥を晒そうが構わん」
こうまで言った。
「フォルモッサ=シェリルよ」
「ええ」
「イデの何たるかを教えて欲しいのだ」
「知ってどうするの?」
シェリルは今度はこのことを問うた。
「それで」
「どうなるものでもない」
ギジェは目を閉じて答えた。
「しかしだ。私は善き力の何たるかをイデが示すのならそれを」
「見たいと」
「そうだ、見たいのだ」
「善き地下の示す善き力の示しを」
「そうではないか。善き力は貴方達か」
そしてだった。
「バッフクランなのか」
「どちらなのか」
「若しかしたら共に悪しきものかも知れないし善きものかも知れん」
今の彼にはだ。バッフクランでさえも善かどうかわからなくなっていた。
「私はそれを知りたいのだ」
「そうなの」
「そしてだ」
「ええ」
「私のことを上官に報告するのか」
「今のところそのつもりはないわ」
シェリルはそれは否定した。
「それはね」
「済まない」
「ただ」
しかしだった。シェリルはここでまた言った。
「私だって考えが変わるかも知れないわ」
そのギジェを見ての言葉である。
「それでもいいのね」
「構わん」
ギジェは短い言葉で答えた。
「生きるも死ぬも貴女に任せた」
「そうなの」
「私は今や捕虜以下なのだからな」
「わかったわ。それじゃあ」
「行くのか?」
立ち上がったシェリルを見ての言葉だ。
「何処かに」
「ええ、キャラルで死んだ人達の合同葬があるから」
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