第二幕その六
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彼女に早く逃げるよう促した。
「はい、けれどこれはどなたのお考えですか?私に対してこんなに行き届いた配慮をしてくれるなんて」
「それは無条件に私を信頼してくれるお方です」
「それはもしかして・・・・・・」
先程アドリアーナはマウリツィオの名を出した。それが仇になった。公爵夫人も女である。すぐにそれを察した。
「その言葉は取り消して下さい。不愉快ですわ」
キッとした口調でそう言った。
「どういう意味ですかそれは、まるで私が無礼なことを申し上げたかのようなお言葉ですが」
アドリアーナもそれに気付いた。強い口調で言葉を返す。
「マウリツィオの名前を出したのはそういうことでしたのね!?」
「それがどうかしまして!?まるで彼をご自身の兄弟のように言われる貴女のお言葉の方が不愉快ですわ」
アドリアーナはそう言って公爵夫人の手を掴んだ。
「この手が震えている。これはどういうことですか!?」
「それは・・・・・・」
彼女は言おうとする。だがアドリアーナはそれより早く言った。
「あの方を愛しているのですね!」
強い声だった。問い詰める声であった。
「それは・・・・・・」
だが公爵夫人はここで開き直った。アドリアーナに負けない強い声で言い返した。彼女の手を振り解いた。
「そうです、私の心はあの人を想う不安と激情で包まれています。彼は私だけのもの!彼の心は私の心とだけ重なり合うものです。彼と私の結び目は誰にも解けないのです」
「それよりも固く熱いもので結ばれたのが私です!」
アドリアーナは戸口の方を見て言った。
「彼は私の傷付いた心を癒してくれます。夜に私を照らしてくれる月のようなもの」
「彼は私の心の支配者です。天国まで私を導いてくれる太陽なのです」
二人は言い合った。まず感情を爆発させたのは公爵夫人だった。
「思い知らせてあげるわ!」
「貴女に出来るのですか!?」
アドリアーナは挑発するように言った。
「出来ますわ、私には!」
「その震える手でですか!?」
アドリアーナも感情を剥き出しにする。公爵夫人の心はさらに燃え上がった。
「ゆ、許せない!貴女を最後の審判のその時まで憎みます!」
「私は貴女を助けてあげているのですよ!」
「その口でよくもそんな事が!」
その時だった。大勢の人間が別荘に入って来る音がした。
「来たわ!」
アドリアーナが叫んだ。公爵が従僕や俳優達を連れて来たのだ。
「主人が!」
公爵夫人は思わず叫んでしまった。
「!」
アドリアーナはここで扉の向こうにいる恋敵の正体を知った。だが口には出さなかった。
「早くお行きなさい!」
彼女はそう言って公爵夫人を急がせた公爵夫人は秘密の扉に入った。
「有り難う、けれど覚えていなさい!」
彼女はそう言っ
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