第二幕その四
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からこそ考え込む。彼女とはこれといって付き合いは無い。
(先程の公爵の言葉・・・・・・。もしかして私と彼女が付き合っていると思っているのか?そしてこうしてここにアドリアーナや監督を呼んだのか。私と彼女の逢引をパリ中に晒す為に)
彼は僧院長を見た。見るからに楽しそうな顔である。
(だとすれば完全な的外れだな。滑稽な話だ。しかし)
彼はサロンの扉の一つをチラリ、と見た。そこには公爵夫人がいる。
(人が違うだけで彼等の企みは成功しようとしている。もし成功したなら私と彼女は破滅だ)
彼は考え込んだ。そしてアドリアーナの耳元に近付いた。
「アドリアーナ、ちょっといいかい」
「はい」
彼女は彼の真剣な顔と声に思わず耳を寄せた。
「君に頼みたいことがあるんだ」
「それは?」
彼は話はじめた。
「実は僕は政治に関する事でここに呼ばれたんだ。僕の国の将来についてね」
「それでデュクロと?」
彼はそれに対して小さく首を振って否定した。
「彼女はここには来ていないよ。僕は彼女とは何も無い。これは信用してくれるね」
「・・・・・・はい」
彼女はそれが真実だと見抜いた。だからこそ静かに頷いた。
「そのうえで君に頼みたいんだ。あの扉にある女性の方が身を潜めている」
そう言って公爵夫人がいる扉を指差した。
「僧院長達があの中に入らないようにして機を見て中の女性を逃がしてくれ。しかしその女性を絶対に見ずに、ね」
かなり彼にとって虫のいい話である。だがこれしかなかった。
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