第二幕その二
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な声で言った。
「私は貴方の心を全て知っています。貴方にとって私はもう色あせたものでしかないのでしょう?だからフランスを去ろうと考えておられるのです」
(まずいな、私とアドリアーナのことに気付いているのか)
彼は公爵夫人の言葉を聞いてふと思った。その危惧は心の中で急激に膨らんでいった。
「私よりもっと美しい人を愛していらっしゃるのではなくて?だから去る、と。私の前を」
「そんなことはありません。私の想いは奥方にだけ向けられています」
マウリツィオは公爵夫人の疑念を必死に打ち消そうとする。だがそれは困難である。何故ならその疑念は真実であるのだから。そう、彼女の疑念は正しかった。
「嘘です、それは嘘ですわ」
公爵夫人はそれに対し頭を振って否定する。女の勘はここでも恐ろしい程正確であった。
「奥方、それ程私が信用出来ないというのですか?」
マウリツィオは何とか彼女の疑念を取り払おうと言葉を出した。
「貴女のお力があればこその私だというのに。その私がどうして貴女を裏切るというのですか?」
「それは・・・・・・」
マウリツィオの言葉と目に公爵夫人も一瞬沈黙した。その時であった。
不意に物音がした。この別荘の玄関からだ。
「待って下さい、今何か物音がしましたよ」
マウリツィオは玄関の方を見た。
「ええ、確かに」
物音は公爵夫人も聞いていた。彼女の顔が強張った。
「聞こえますね」
マウリツィオは窓の方へ歩いて行った。そして窓から外を見る。
「はい、車の音が」
公爵夫人も彼の後について窓の外を見る。
「どなたかこの別荘にお呼びしましたか?」
「いえ、貴方の他は誰も」
公爵夫人は頭を横に振って言った。そこには偽りはなかった。
「だれかここに入って来ますよ」
「あれは・・・・・・主人ですわ」
当時のフランス貴族の間では浮気や不倫は日常茶飯事であった。彼等はかなり乱れた生活を送っていた。
だがそれを公にされるとまずいのは今と同じである。男ならまだよいが女に対してはいささか厳しいのは何時の世も変わらないことであろうか。
「私の後をつけていたのは公爵だったのかな」
「だとしたら私は・・・・・・」
公爵夫人は顔を蒼くさせた。
「私にお任せを」
二人はサロンを見回した。中は月の光で明るい。マウリツィオは至って冷静であるが公爵夫人はオロオロとしている。彼はそんな彼女を気遣いつつ手前の戸口を開けた。
「ここがいいな。さあどうぞ」
彼は公爵夫人をその中に入れた。彼女はその中に力無く入って行った。
「さて、と。後は公爵達に対して一芝居だな」
彼は扉を閉めてそう呟いた。そこへ公爵と僧院長が入って来た。
「今晩は、伯爵。よくぞいらっしゃいました」
公爵は皮肉を込めて彼に言った。
「ま
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