第二幕その一
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マウリツィオは申し訳なさそうに部屋に入って来た。
「本当です。私がどれだけ待ち焦がれたと思っているのですか」
公爵夫人は彼を咎めるような顔で言った。
「全く、人を待たせるのは罪ですよ」
「申し訳ありません」
公爵夫人の言葉に対して彼は頭をうなだれた。
「けれどいいですわ。来て下さったのですもの」
彼女はそう言うとニコリと笑った。
「けれどどうして遅れたのですか?」
「実は後をつけられまして・・・・・・」
彼は表情を暗くして言った。
「一体誰に!?」
公爵夫人はそれを聞いて顔を引き締めた。
「見知らぬ男二人組です。私が近寄ると彼等は逃げ去りましたが」
「本当ですか!?」
「私が嘘を言うと思われますか?」
彼は真摯な顔で彼女に言った。
「それは・・・・・・」
彼女は彼の言う事を肯定しようとする。だがその時彼の胸にあるすみれの花に気付いた。アドリアーナが送ったあのすみれの花である。
「それは芳しい贈り物が証明しておりますわ」
「それは何ですか?」
マウリツィオはその言葉にキョトンとした。
「これですわ」
彼女はそう言ってマウリツィオの胸のすみれの花を取って彼に見せた。
「あっ、それは・・・・・・」
マウリツィオはそれを見てハッとした顔になった。そして内心舌打ちした。
「それは・・・・・・?」
公爵夫人は彼の顔を見て媚惑的に微笑んだ。
「これは貴女への贈り物です、マダム」
彼はそう言ってそのすみれの花を彼女に握らせた。花は彼女の手の中で柔らかく握られた。
「あら、本当ですか?誤魔化すのがお上手なんだから」
「誤魔化しているわけではありませんよ、神に誓って」
「私にも誓って下さいますか?」
「勿論です」
「それではわかりました。有り難く受け取らせて頂きます」
彼女はそう言うとすみれの花を胸にさした。そしてマウリツィオに自分の手を差し出した。
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