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西部の娘
第二幕その一
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「それにしても不思議だな」
 ジョンソンは小屋の中を見回して言った。
「何が?」
 ミニーはそれに対して尋ねた。
「うん、ここにこうやって一人で住んでいるのが。ポルカかその側に住むのが普通かな、と思うし」
「訳を知りたい?」
 ミニーは両肘をつき顎を両手の甲の上に置いて問うた。
「うん。良かったら」
 ミニーはそれを聞き笑顔で語りはじめた。
「私がソレダードで生まれたのは話したよね」
「うん」
「私の家は山の麓にあったのよ。そして私はいつも野山の中を駆け回って遊んでいたわ。野原に下りてカーネーションやジャスミンを探したりしてね」
 彼女は少しうっとりとした目で言った。
「山には松の並木があってそこでマツボックリを取ったわ。そしてそれでいつも遊んでいたのよ」
 ふと小屋の壁を見る。そこにはマツボックリが数個掛けられていた。
「今も時間があればそうしてるわ。私は今でも野山や野原に行くのが大好きなの」
「山が荒れた時は?」
 ジョンソンは尋ねた。
「その時は本を読むわ。聖書をね」
「聖書か。その他に読む本はある?」
「あるわ。これよ」
 そう言って一冊の本を取り出した。
「これは・・・・・・恋愛小説かい?」
 ジョンソンは表紙に書かれた題名を見て言った。
「そうよ。柄に合わないけれど」
 ミニーはクスリ、と笑って言った。
「けれどまだよくわからないの」
 ミニーは席に戻って言った。
「恋愛がどんなものかは。ひょっとしたらこれからずっとそうなのかも」
 苦笑して言った。
「束の間の恋も永遠の愛も私には関係無いのかも」
「それは違うと思うよ」
 ジョンソンは言った。
「世の中にはその束の間の恋や永遠の愛に全てを捧げる人がいるのだから」
「そうかしら」
「ええ。今ここにも」
 そう言ってミニーを見つめた。
「嫌だわ、そんな冗談」
 ミニーは顔を赤らめてそれを否定した。
「嘘なんかじゃありませんよ」
 ジョンソンは首を横に振って言った。
「あの時会ってから」
 その言葉を聞いたミニーの脳裏にあの時のことが甦る。
「あの時ですね」
 二人がはじめて会ったあの時だ。
「モンタレーでのことを」
「ええ、よく覚えているわ」
 ミニーは答えた。
「忘れる筈がないわ。けれど」
 そこで言葉を区切った。
「けれどあたしには・・・・・・」
 それを容易に受け入れられないのだった。
「怖いのですか?」
「え!?」
 ミニーはジョンソンのこの言葉に顔を上げた。
「恋が」
「それは・・・・・・」
 言葉が出なかった。
「僕はあの時から・・・・・・」
 ジョンソンはミニーを見て言った。
「止めて・・・・・・」
 ミニーはそれに対し目を瞑り耳を塞ごうとする。

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