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西部の娘
第一幕その四
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成程、だからメキシコ人に顔が似ているのですね」
「ええ。実際メキシコ人の血も入っていますが」
「そうですか」
 やはりメキシコ系に対する偏見かと思われた。
「まあそれはどうでもいいのです。実際ここにもメキシコ系の者は多くいます」
 ランスは別にメキシコ系だからという偏見は無かった。彼はこれまで銃一つで生きてきてきて多くの人間を見てきた。そして出身や人種による価値判断がどれだけ無意味なものか知っていたのだ。
「ただね」
 彼はここで目を光らせた。
「今この近くにメキシコから来た盗賊の一団が来ていましてね」
「それは聞いています」
「なら話は早い。そういうわけで余所者には少し神経を尖らせているのです」
 彼はそう言うと男を見た。実はミニーが彼の顔を見てハッとしたのが気になっていたのだ。
「お名前は?」
「ジョンソン。ディック=ジョンソンといいます」
「ほう、いい名前だ」
「有り難うございます」
「そして何も目的で来られました?」
「旅をしていまして。ちょっと休む為に馬を止めました」
「旅ですか。どちらまでですか?」
「サンフランシスコまでです」
「そうですか。お気をつけ下さい。あちらはここよりもずっと柄が悪いですからな」
「そうなのですか」
 この時代のカルフォルニアは今とは違っていた。西部といえば荒くれ者や犯罪者の集まりという世界だった。ネイティブとの争いもあり騎兵隊があちこちで戦っていた。余談であるが騎兵隊やカウボーイ、ガンマンにはアフリカ系も多くいた。差別されている筈のアフリカ系もやはり他所から来たアメリカ人であり彼等もまたネイティブ=アメリカン達から見れば侵略者であったのだ。歴史とは一面からは言えない。
「ランス、もうそれ位でいいでしょう」
 ここでミニーが口を挟んだ。

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