過去の出会い
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俺と詩乃が出会ったのは中一の頃
今年入学したやつに人殺しがいる
そんな噂を聞いたのは二年に上がったころだ
その頃の俺は親の言うことをバカみたいにきいていたただのガキだった
守るだけの力を持っていながら最初から味方になってやれなくて今でも後悔してる
「あなたも私を傷つけるの?」
それが詩乃から一番最初にきいた言葉だった
「……はぁ……」
中学校受験の日高熱を出して休んでしまい試験を会場で受けられなかったのだ。そして、無理矢理病室で受けた試験は意識が朦朧としていたからか惨敗
仕方なく地元の公立中学に入学
親には家族の恥と言われ、次の受験では必ず名門高校に合格することを約束させられた
学校が終わるとすぐに家庭教師、武道の練習、そして自習
もちろん遊ぶ暇なんて少しもなかった
とても空虚な日常
友達なんてできない。強いからいじめられもしない
他人に興味なんてできない。時折俺はそんな自分を思ってため息をつく
これが俺に許された数少ない自由だから
「じゃあ帰るか……」
最後のホームルームが終わると同時に俺は教室を出る。学校が終わるのが午後三時。家庭教師が来るのが午後三時半。家からここまで歩いて二十五分かかる
急がないと間に合わない
だから誰とも話さず、誰とも触れ合わずいつも通り帰る、はずだった
「っ!!」
早足で廊下を歩いていると横から誰かがぶつかってきた
黒髪に眼鏡をかけた少女。目には涙がたまっている
ぶつかってきたのは少女の方だが俺が鍛えてたからか弾きとばされたのは少女の方だった
「あなたも私を傷つけるの?」
俺が謝罪を言う前にそんなことを言う少女
だからかもしれない。俺が初めて他人に興味を持ったのは
「いや……別に傷つけるつもりは無いけど……」
対人交渉術も学んでいるがいきなり敵意と恐怖を込めた視線を向けられて口籠もってしまう
「嘘!皆、人殺し、人殺しって……」
それをきいたときこの子が噂の子だと気が付いた
この時俺が感じていたのは
めんどくさいのに絡まれた
そんな感情だった
家庭教師の時間に遅れると課題が倍になり睡眠時間が無くなってしまう
「皆人殺しだっていう理由で私をいじめてくる!だからあなたもそうなんでしょ!」
そう言って走り去ってしまった
俺はそのまま家に帰ったがその後ずっと心にその姿が焼き付いていた
今思えば自分と似ていたんだと思う
詩乃は過去という鎖で縛られ、俺は家という鎖で縛られている。相談できる人もいない、そんな孤独の中で
「なんで……考えてしまうんだ?」
その疑問は暫く解けるとこはなかった
「朝田詩乃さん…
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