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西部の娘
第二幕その七
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女はその一瞬の時を逃さなかった。
 手にするカードを自分の服の胸のところに隠した。そして靴下から五枚のカードを取り出したのだ。
「ほら」
 彼はその水をミニーに差し出した。
「有り難う」
 ミニーはそれを受け取った。そして口に含んだ。
「怖いのか」
 彼はそれを見て問うた。
「どうして?」
 ミニーは逆に尋ねた。
「俺に負けるのが」
「いいえ」
 ミニーはそれを否定した。
「喜びのあまり喉が渇いたのよ」
 そう言うとニヤリ、と笑った。
「どういう意味だ!?」
 ランスはそれに対して問うた。
「カードは変えないの?」
「ああ」
「じゃああたしも」
「そうか」
 彼はミニーの顔に何かを感じたが口には出さなかった。
(あの自信、かなりのカードか)
 そう思った。しかし顔には出さない。
「貴方のカードは?」 
 ミニーは再び尋ねてきた。
「スリーカードだ」
 彼はカードを見せて答えた。
「あたしの勝ちね」
 ミニーは再びニヤリと笑って言った。
「あんたのカードは!?」
「エースのフルハウス」
 そう言ってカードを見せた。その通りだった。
「そうか」
 ランスはそれを見て言った。顔にも声にも出さなかったが落胆した。
「邪魔したな」
 彼は席を立った。そして扉を出て小屋を後にする。
 ミニーはすぐに席を立ち小屋の扉に錠を下ろした。遠くから馬の鳴き声が聞こえる。それはすぐに遠くへ消えていった。
「終わったわ・・・・・・」
 ミニーはそれを聞いてホッと胸を撫で下ろした。
「あたしは勝ったのね」
 屋根裏からジョンソンを出す。彼は気を失っている。
「貴方は助かったのよ・・・・・・」
 そしてジョンソンを抱く。
「成功してよかった・・・・・・」
 彼女はイカサマが成功したのを心から喜んだ。
「こんなこと神様はお許しにならないでしょうけれど」
 泣いていた。ジョンソンを救った喜びと神に許されることをした悔恨から泣いていた。
「それでもあたしは貴方を救いたかった・・・・・・」
 そして救った。彼女はジョンソンにしがみついて泣いていた。

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