第百十三話 評定その九
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「利休はかなりのものじゃ。わしと同じじゃ」
「殿と」
「共に果てしないものを見てそして目指しておる」
「天下と茶道」
「それだけに無欲であるが欲深くもある」
「欲は天下や地位、領地や金銭、財宝だけではありませんか」
帰蝶もわかってきた。野心の対象というものはそういったものだけではないのだ、道もまたそれに入るのだ。
だからこそ利休は強欲でもある、そういうことだった。
そして利休はそえだけではなかった。信長は彼についてこうしたことも言った。
「あの者の識見と政を見る目は頼りになる」
「そういえば近頃よく茶室で話をされていますね」
「都においてもな」
「やはり政のことですか」
「そうじゃ。内外のことで色々と話しておる」
実際にそうしているというのだ。
「爺や勘十郎とも話をしておるがな」
「そういえb勘十郎殿は近頃」
「うむ、都に送ってな」
そうしてだというのだ。
「護りを固めさせ何かと仕切らせておる」
「六波羅の様に」
「所司代じゃな」
それになるというのだ。
「都はあ奴にかなり任せておる」
「それはいいことです。ですが」
「うむ、あ奴も警戒しておるがな」
「そうです。家中の方全てに言えますが」
「津々木の如き者がまた出ればな」
織田家は今も彼のことを忘れていなかった。そのうえで非常に強い警戒の念を抱き探してもいるのである。
それで信長も言うのだった。
「危ういからのう」
「そうしたことへの策は」
「とりあえずは怪しい者は近付けぬ様にしておる」
人はよく見ているというのだ。
「今はな」
「それがいいですね」
「領内では楽市楽座にしてそして関所も置いてはおらん」
「確かに人の行き来は多いですが」
「怪しい者が入りやすくもある」
この問題もあった。
「だから余計に領内の見回りや警備は厳しくしておる」
「それがひいては領内の治安もよくしていますね」
「罪人にも気をつけておるしのう」
「それもまたよいことですね」
「とにかく手は打っておる」
「では怪しい者は今のところはいませんか」
「今のところはのう。さて」
信長はここまで話したところで今の話を止めてそのうえで帰蝶に対してこう言ったのである。
「それでは今から茶を飲もう」
「私がお淹れします」
「頼めるか。やはり茶はよい」
茶については信長は純粋に好きだった。酒を飲めぬ彼にとって茶とは掛け替えのないものになっているのだ。
だからその茶を飲みたいと言うのだ。
「一服にもなるし飲めば目も頭も冴える」
「だからいつも飲まれるのですね」
「飯の時には焼き味噌と梅を欠かさぬ」
実際に信長は三食常にこの二つを欠かさない。
「味噌は大好きじゃ」
「それも尾張の濃い味噌ですね」
「都の味噌は
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