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八条学園怪異譚
第十九話 口裂け女その八
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「乗らせてもらってあちこちで遊んでるんだよ」
「口裂け女ってやっぱり赤い車なのね」
「そうだよ、基本車なんだよ」
 聖花に対して答える。
「それでも鉄道も好きなんだよ」
「それで一番好きなのは何処のなの?」
「何処の私鉄のなの?」
「蒸気だけれどD51だね」
 マニアック、しかもいい趣味だった。
「あれがよかったね」
「電車じゃないじゃない」
「そうよね」 
 二人は口裂け女の言葉にこう返した。
「何ていうかそれって」
「違うと思うけれど」
「電車だったらね」
 この場合についても答えてきた。
「八条電鉄の」
「ここで八条グループなのね」
「だっていい電車多いからね」
 笑顔で愛実に返す口裂け女だった。
「やっぱりね」
「そうよなのよね、八条電鉄の電車っていい車両が多いのね」
 聖花は八条電鉄の電車についてこう言った。
「青いカラーでしかも内装も奇麗で」
「だから好きなのよ」 
 口裂け女はその目をにこにことさせ続けている。
「あたしもね。ただ博物館の中でよく寝泊りする車両はね」
「どれなの?」
「ブルートレインなんだよね」
 それだというのだ。今では懐かしいものになっている寝台車である。
「あれが好きなんだよね」
「マニアックね、これまた」
「これでも鉄女なんだよ、あたし」
 車で移動すことで知られている妖怪だがそれが好きだというのだ。
「だからね」
「好きなのね」
「そうだよ。それでね」
「それでって?」
「あんた達泉を探してるんだよね」
 この話になった。口裂け女は目を普通の切れ長のものにさせてそのうえで二人の目的に対して言ったのだった。
「そうだよね」
「ええ、そうよ」
「相変わらず見付かってないけれど」
「それだよね。だったらね」
「だったら?」
「っていうと?」
「いや、あたしに一つ心当たりがあるけれどね」
 泉である可能性がある場所を知っているというのだ。
「そこにね」
「ふうん、じゃあそこは何処なの?」
「何処にあるの、そこは」
「学園の、その鉄道博物館の前の電話ボックスだよ」
 そこだというのだ。この学泉でもかなり減ってしまったが電話ボックスはまだありそこではないかというのである。
「そこじゃないかね」
「電話ボックス?」
「どうしてそこが泉なの?」
 二人は電話ボックスと聞いて首を捻って言った。
「あの、それって何か違うんじゃないかしら」
「電話ボックスってねえ」
 二人で怪訝な顔で話す。
「ただ電話をする場所だから」
「違うと思うけれど」
「わかってないね。電話ってのは他の場所に連絡をするじゃない」
 口裂け女はまた目をにこにことさせて二人に話す。
「それを行う場所だからね」
「あっ、異界への扉でもある」

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