第十九話 口裂け女その七
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「実はね」
「ああ、だからコートなの」
「いつもそれ着てるのね」
「そうよ、夏でもね」
「今梅雨だけれどコートって考えてみればおかしいけれど」
「別に変質者じゃなかったのね」
「変質者は余計だけれどね」
聖花の今の言葉には即座に返す。
「あたしは寒いのが苦手なのよ。それでね」
「車から電車の方に行ったの」
「鉄道の方に」
「そうなんだよ。あそこは暖かいんだよ」
それで移ったというjのだ。
「いい場所だよ」
「ううん、何かね」
「人間臭いっていうか」
「あたし達都市伝説系の妖怪ってのは人間がいるって思えばいるんだよ」
口裂け女の言葉である。その彼女の。
「そういうのだからね」
「人間が思うといるからなのね」
「人間臭いのね」
「そうだよ、とはいっても忘れられることも多いけれどね」
このことは愛嬌と言えるものだというのだ。
「あたしの存在をね」
「まあそのことはね」
「ちょっと言わないってことで」
このことは二人も苦笑いになって言う、そしてここでこんなことも言うのだった。
「で、これから鉄道博物館に行くの?」
「そうするの?」
「そうする?多分花子さんも来てるよ」
この前会った彼女もいるというのだ。
「あの娘もね」
「そういえば同じ都市伝説系の妖怪なのね」
「あんた達ってそうなのね」
「親友だよ」
実際にそうだというのだ。
「よく一緒にいて楽しく飲み食いしてるよ」
「で、口裂け女さんの方が年上なのね」
「つまりは」
「あたしが生まれたのは昭和の五十四年か五十五年だったからね
「ああ、近鉄の黄金時代ね」
「その頃よね」
聖花は愛実のこのマニアックと言っていい言葉にすぐに返した。
「西本幸雄さんが監督でね」
「そうそう、第一期いてまえ打線が暴れてたのよね」
「あんた達女子高生にしては結構おばさんだね」
口裂け女もこう言うまでにだ。
「近鉄とくるとはね」
「何か思い出したから」
言い出した愛実の言葉だ。
「家のお店によく近鉄ファンのおじさんが来ていつも言ってるの」
「そのおっさん今も牛派かい?」
「今の親会社の間は鷹応援するって言ってるわ」
「ああ、福岡に行った鷹だね」
「そう、今の親会社でいる間が絶対に応援できないって」
「まあねえ。色々あったからね」
口裂け女もこのことは納得している感じで頷いて言う。
「ライバルもいなくなったしね」
「ライバル?ああ、あそこね」
聖花が口裂け女の今の言葉に応えた。
「阪急よね」
「そうだよ、ブレーブスだよ」
「ブルーウェーブよね」
「いいチームだったんだけれどね」
今度は悲しい目を見せる口裂け女だった。マスクをしていてもその表情の動きはわりかし豊かな方である。
「あのチームもね
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