第二十四話
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て、何一つ含むものの無い年下の美少女から可愛らしく声を掛けられたら、芝山としては「こちらこそよろしく」と優しく微笑み返すしかなかった。勿論その美少女の正体が、ある意味含むものだらけの山田鷹二の中の人だとも気付く事も無く『お人形さんみたいってこういう子の事を言うんだな』などと思っていた。
「よろしくお願いします」
次いで右隣からも声が掛けられる。
年の頃は先に声を掛けてきた子と同じようにも思えるが、その落ち着いた雰囲気と完成された見事な体型自分よりも年上なのかもしれないと芝山に感じさせる。先程とは違って少し下心ありの笑顔で「こちらこそよろしくお願いします」と返答するが、やはり彼女の正体が自分より1歳上と言っていた尾津保次郎の中の人だとも気付く事も無く『やっぱり美人って良いな』と鼻の下を伸ばすのを堪えていた。
一方、当然自分が芝山の隣に座るものだと思って疑いもしなかった梅木は、一瞬にして変わってしまった状況に戸惑うも、自分の代わりに隣の席を占めた2人が、女で、しかも男性から見れば魅力的だろうと自分にも分かるレベルであり、現に芝山の顔が微妙にやにさがっている事に怒りと焦りを覚えた。
梅木は芝山の席の前に立つと彼の手を取る。
「柴田さん。席を変えましょう」
そう言って芝山を席から立たせようとすると、尾津が「何か気に障るようなことをしたかな?」と声を掛ける。
「いえ、そう言う訳では……」
まさか自分の連れが貴女達に気を惹かれているようだから引き離そうとしています。と正直に言うのは女としてのプライドが許さず、考えあぐんでいる間に席は埋まっていく。
基本的にシャイな日本人の場合は、知らない者同士が自分で選んで席をとるのなら隣に誰もいない席から埋まっていくのは必然であり、梅木が気付いた時には2つ並びで座れるような席は残っていなかった。
一瞬の気の緩みで、芝山との心の距離を縮め、住所や電話番号やメールアドレスを入手する。そしてあわよくば2人の関係を先のステージに進めようと考えていた自分の計画が序盤で大きく道を外れてしまったことに唖然とする。
結局、芝山から離れた席に座るしかなかった梅木に対し、尾津はチャンスとばかりに自分のターンを有効に使う。
「こういう場では、名前を聞くのはマナー違反だろうから、名前の代わりに」
少し腰を浮かせて芝山に身体を向けて座り直すと、そう言って右手を差し出して握手を求める。
「これからよろしく。3日後にはちゃんと名前を名乗りあえるようになってると良いですね」
独特の雰囲気のある美しい女性に対して芝山は、男の性に従い少しでも良いところを見せようと、紳士気取りで答えながら差し出された手を握る。
「もう少し親しくなれると良いのですが」
尾津は普段とは違う背伸びをした芝山の振る舞いに微笑まし
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