第53話 風と稲妻
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はい」
風見志郎の言葉を受けフェイトは風見邸に足を運んだ。中は思っていた程散らかっておらず綺麗に片付けられていた。
恐らく志郎が後片付けをしたのだろう。
部屋の中に用意された来客用のソファーに腰掛ける。
台所の奥から御盆を手に志郎が来た。お盆の上には煎れたてで湯気が立ち昇る茶が入っている。
「俺は余り茶を煎れるのは得意じゃないんだ。不味くても勘弁してくれ」
「あ、いえ! 私は大丈夫です」
なんと言うか以前会った時と雰囲気がまるで違っている事に驚かされる。
思い切り度肝を抜かれた感じだ。
「さて、それで俺に話しとは何だ?」
「風見志郎さん……もう復讐をするのを止めて下さい」
途端に部屋の空気が重くなったのを感じる。目の前の志郎の空気が重くなったのだ。
見ると目の辺りが以前会った時の様に尖りだす。恐ろしい目であった。
一体どうしたらあんな目が出来るようになるのか。
そして、そんな目をフェイトに向けてきた。
「お前に何が分かる? 家族を奪われた者の気持ちがお前に分かるか?」
「貴方の心中はお察しします。でも、そんな事をしたって遺族の方は悲しむだけです!」
「いい加減にしろ!」
志郎は怒鳴った。持っていた湯呑みを地面に投げ捨てて立ち上がる。割れる音がした。地面には志郎が投げ捨てた湯呑みが粉々に砕けて散っている。
そんな事を気にせずフェイトは志郎を見た。
志郎は激怒していた。当然だろう。見ず知らずの者に家族の事をどうのこうの言われた為であろう。
「これ以上言うな! 俺は復讐の鬼になると決めたんだ! 殺された家族の仇を取る為だけにだ!」
「そのせいで……そのせいで妹さんが泣いてるのにですか?」
「なっ!?」
その言葉を聞いた志郎は固まった。目が大きく開き、体を震わせながらフェイトを見ている。
「でたらめを言うな! 妹は……雪子は既に死んだんだ! お前が雪子の声を聞ける筈がない!」
「いいえ、聞きました。貴方の妹の雪子さんから!」
フェイトのその言葉を聞き、志郎は黙り込んでしまった。毅然とした表情で見るフェイトの目に嘘偽りは感じられない。
「雪子さんは、こう言ってました……大好きなあの頃の志郎さんに戻って欲しいって」
「あの頃の……俺」
志郎は呆然としていた。ふと、脳裏にかつての楽しかった頃の光景が浮かび上がる。
この家で家族四人仲良く暮らしていた頃の記憶。
父と母、そして妹の雪子と自分。何処にでもある様な幸せな家庭であった。そして、その記憶が志郎の中に流れ込んでくる。
志郎の目から涙が溢れ出て来た。止め処なく涙が零れ落ちる。
その雫を手に取り志郎は自分が流した涙を見て半ば自傷気味に笑った。
「まだ、まだ俺
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