第53話 風と稲妻
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その少女が何故墓の前に立っているのか。
「君は誰? 一体何処から来たの?」
フェイトは尋ねた。
しかし、その問いに少女は答える様子がない。
嫌、寧ろその少女からは生気が感じられないのだ。
まるで……そう、死人の様な――
【止めて……止めて……】
声が聞こえた。
だが、耳にではない。心に直接響いてくる声だ。
とても悲しそうな声であった。そんな声がフェイトの頭の中に響いてきた。
「止める。一体誰を止めるの?」
【止めて……お兄ちゃんを……止めて】
「お兄ちゃん?」
【このままじゃお兄ちゃんは……只の殺し屋になっちゃう。そんなの嫌だよ……私の大好きな、昔のお兄ちゃんに戻って欲しい……でも、私じゃ止められない……お願い。お兄ちゃんを……止めて!】
お兄ちゃん。一体誰なのだろうか。
フェイトが考えてる前で、その少女は忽然と姿を消してしまった。
まるで幻を見ているようでもあった。
「あの子……なんであんな悲しい目を……あっ」
ふと、フェイトは墓石に刻まれた名前を見た。そして其処には一人の少女らしき名前が彫られていた。
「風見……雪子……もしかして、あの子が止めて欲しいって言ったのは、志郎さんの事じゃ!」
今さら確認する事は出来ない。もう既にこの少女は生きていないのだから。
先ほどフェイトが見たのはもしかしたら雪子の亡霊なのかも知れない。もしそうならば、彼女の遺言通り風見志郎を止めねばならない。
今のまま風見志郎が突き進めばその先に待っているのは修羅の道しかないのだから。
***
「……」
誰も居ない風見家に志郎は一人帰ってきた。部屋には明かりがついていないのか半ば暗い。
そんな部屋の中に置かれたソファーに志郎は腰掛ける。
「静かになったもんだ……この家も――」
今までの家だったならば妹がじゃれつき両親の笑い声の耐えない幸せな家庭であった筈だ。その家庭が突如として奪われてしまったのだ。
それを感じると志郎の中に沸々と怒りの炎が湧き上がってきた。
「俺は断じて許さん! 奴等デストロンを一人残らず地獄に叩き落す」
怒りの形相を携えたまま志郎は家を出る。玄関の扉を半ば乱暴に開き外に出る。
「あっ!」
「うん……」
見ると門の前には先ほどの少女が立っていた。確か、フェイトとか言ってた筈だ。
「何の用だ?」
「あの……少し、お話出来ますか?」
「……」
風見志郎は黙り込んだ。一瞬突っ返されるかとヒヤヒヤしていたフェイトだった。
だが――
「入れ」
「え?」
「此処で立ち話出来る話じゃないんだろ? 茶位なら俺でも出せる」
「あ、
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