暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
戦前のひととき
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かく作り上げられたこの関係が、一気に崩れ去ってしまうように思えてしまったからだ。

答えに窮していると、背中がバン!と叩かれ、思わぬところから助け舟が差し伸べられた。

「あっはっはっはっはっは、レンお疲れ〜。だいじょうぶ?疲れてない?」

ユウキだった。普段はうるさく感じるこのムードメーカーも、今この状況であれば、天の祝福に見える。いきなりハイテンションなこの従姉は、どっかと同じベンチに腰を下ろす。

「アスナも久しぶり〜、でもないかぁ。三日ぶり?あはは」

アスナもしばらくの間、呆気に取られたようにユウキを見ていたが、やがてじんわりと微笑む。

しばらくの間、キャイキャイとユウキ達がはしゃぐのを横目で見ていたが、もう用はないと思い、立ち上がったが、後ろからユウキの声が追いかけてくる。

「あっ、レン!」

その無邪気な声に反し、振り返った目に映ったのユウキの表情は真剣そのものだった。

「明日………大丈夫、だよね?」

その言葉の中の大丈夫、というものはこの場合、決して自分の身の安全を心配するものではないことをレンは知っている。

そんなものを心配するくらいならば、最初から討伐戦参加を反対すれば良いだけの話だ。

そこではなく、ユウキが心配するのは、自分、レンホウの中に住まう《鬼》の発現のことである。

《ヒト》を殺した《バケモノ》は、心の中に《鬼》が生まれる。

これは自分の持論だが、これから先も揺るがないと思う。

この《鬼》が暴走した先にできてしまったのが、【笑う棺桶(ラフィン・コフィン)】であり、あの【尾を噛む蛇(ウロボロス)】であったりするのだ。

この《鬼》は普段、心の奥底に潜み隠れているが、殺し合いの場になると、引きずり出てくる。自分の中の大切なものを傷付けながら。

残念ながら、自分の中の大切なものは、傷付けさせられすぎた。

取り戻すにはもう遅いのだろう、なんとなく解かる。

だけど──

「うん、大丈夫だよ」

そう言った。

ユウキの顔が解かりやすすぎるくらいにほっと弛緩する。

その顔を見て、ちくりと心の中に罪悪感という名の痛みが発生するのを感じながら、レンはぷらぷらと後ろ手を振りながら立ち去った。

ユウキから逃れるように。

その場から逃れるように。

全てから逃れるように。










人の心には《鬼》が宿る。

人は普段、《鬼》と共存して生きている。

しかし、それは《共存》であって、《共生》ではない。

《鬼》は人を喰う。

心を、精神を、全てを。

問題はそれをどうやって越えるかってことだ。

たぶん、それを乗り越えた者のことを、人は《大人》って呼ぶんじゃない
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