Silent 60'S Mind
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る!
「キャアッ!」
お嬢様の悲鳴を横目にアクセルから足を退かしてブレーキを踏んだ。何が起こったか分からないが、これで前輪が落ちる筈だ。せっかくの新車なのに、なんでこんな目に会うんだ! 傷でもついたら大変じゃないか!
前輪が落ちる筈。それが僕の予想だった。というよりも常識で考えればそうなる筈だった。しかし、ブレーキを踏んでも変わらない。ブレーキ音が響かない。車が静止しない。
「な、何が起こってるんだ?! あ、ああ、車がまだ動いてる! 後輪が滑っている!」
何が起こっているのか理解ができない。車でウィリーをしている状態だ。車はそんな事ができるようには作られていない。まさかこれ、動転していてよく分からないけど、後ろで車体が擦れているんじゃないのか!? じょ、冗談じゃないぞ! 新車なんだ、自分で貯めて買った車なんだ!
問題は前輪が浮いているという事だ。まずは浮き上がった前部分を落とさなくちゃいけない。後輪が滑っている理由は分からない。けれど、問題を一つ一つ処理してる暇はない。同時に解決するッ!
「エコーズact3!」
運転席の前に、フロントガラスを突き抜けるように縁日のお面を被った小柄な少年のような像が現れた。僕のスタンド。僕の能力。十三年前も、これがあったから生き延びる事が出来た。
「act3! 車体を重くしろォォ! (でも傷つかないように優しくね?)」
『了解シマシタ。3 FREEZE! ソット重ク、タイヤガ少シダケ凹ム程度ニ!』
ズン、という音と共に車が落ちた。僕のスタンド、エコーズACT3には物を一つだけ重くする能力を持っている。今、僕は車自体を重くした。……車は並行、走行も停止。ふう、ようやく落ち着いても大丈夫そうだ。キーを回してエンジンを止めた。
「……静さん、大丈夫? 怪我はない?」
「――フゥ、大丈夫、です。びっくりしましたけど。何だったんですか? 氷でもはってたんでしょうか」
「分からない。水溜りもなかったけど。一度車を降りてもらえる?」
「はい」
二人して車を降りる。車の外から見ても、原因は分からない。
「あ、ああ! やっぱり擦ってる! リアバンパーが! うう、何でこんな……」
「……広瀬さん。提案があります」
「うう、何? もう少しだけ感傷に浸らせてほしいんだけど。傷くらい、いつかはつくって覚悟してたけど早すぎる……」
「トランクを開けてもらえますか?」
「え? ……いいけど――はい、開けたよ」
ガタリとトランクの鍵が開くと、彼女は中から旅行カバンを引っ張りだした。う、もしかして何か大事な物でも入っていたのだろうか。もしかして、割れるような物とか。あんな運転しちゃった手前、壊れてたら僕のせいだ。感傷に浸ってる場合じゃなかった。
「
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