Silent 60'S Mind
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のほう。私が気にするよりも先にパパは実の両親を探していました。
私は自分の境遇を理解しています。透明になる能力。そのせいで実の両親とはぐれた事を。パパも理解しています。
私は捨てられた訳じゃない。実の両親は今でも私を探しているかもしれない。パパはそれを気にしている。亡くなったママも気にしていました。
だから私は日本に来ました。でも、見つからないだろうとも思っています」
「……それは何故?」
「パパはスピードワゴン財団を通して実の両親を探しました。でも見つからない。大勢の人とお金をかけても見つからないのなら、私が簡単に見つけられる筈もありません。
見つからないだろうと思っているけれども、期待もしています。血縁とは断ち切られる物ではないという事を。きっといつか、何かに引き寄せられるようにめぐり合うかも知れない。小さな期待です」
そう言った彼女はベンチから立ち上がり、傍に置いてあった大きな旅行カバンを持った。
僕は彼女の話からどこかチグハグな印象を受けた。両親を探す。でも見つからないと考えている。ならばわざわざ日本に来るだろうか。妙な感じだ。彼女には日本に来なければならない理由があるような気がする。今は長期休暇の季節じゃない。日本の学校も休みではないし、僕は詳しくは知らないけれどもアメリカの学校だって休みではないだろう。
わざわざ学校を休んでまで日本に来る。それほどの意志がある。なのに、彼女の言葉からはそれを感じられない。チグハグだ。嘘をついているのだろうか。それとも、まだ話していない理由があるのだろうか。
「今日の予定は決まっているの?」
「ありません。ホテルに行こうと思っています」
「わかった。カバン、僕が持つよ。重いでしょう?」
「ありがとうございます。お願いします」
彼女からカバンを受け取った。見た目よりも重くは無かった。あまり荷物は多くないのかもしれない。ついてきて、と一言かけて、僕は歩き出した。先には一台のセダンが止まっている。
三ヶ月前に買った僕の愛車だ。自動車の免許は三年前に取得したけれど、車は両親の物を借りて運転していた。自分で働いたお金で買った、自慢の愛車だ。トランクを開けて彼女のカバンを入れてから、彼女を助手席へ座らせた。僕は運転席へ座り、エンジンをかける。ドルン、ドロロロ……初めてこの車のキーを回した時のワクワクを思い出した。いつまで僕はこのワクワクを覚えているだろうか。まだ三ヶ月だ。まだまだ味わえるだろう。
車を走らせて杜王グランドホテルを目指す。十三年前、空条承太郎が使っていたホテルだ。内装は中々豪華で、一泊のお値段も安くはない場所である。やっぱり彼女はお嬢様だ。何泊するかは聞いていないが、社会にでるようになって思う。僕にはこんなお金の使い方はできそうにない。彼女の面
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