第二十二話 黒姫からの警告
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宿舎まで送ってもらった。ようやくゆっくりする事が出来る、そう思いながら宿舎に入ろうとすると暗闇の中から声が聞こえた。
「国家安全保障庁副長官、ギュンター・キスリング中佐ですね」
まだ若い声だ、油断は出来ないが敵意は感じられなかった。宿舎の陰に隠れているのだろう、姿は見えない。どうやらゆっくりするのはお預けのようだ。
「物陰に隠れて声をかけるなど穏やかではないな、何者だ」
「失礼しました、今姿を見せます」
宿舎の陰から男が姿を現した。敵意が無い事を示す為だろう、ゆっくりと近づいて来る。近づくにつれ容貌が見えてきた、この男は……。
「黒姫一家、オーディン事務所の駐在員、テオドール・アルントです」
本人だ、間違いは無い。オーディンの黒姫一家の事務所では所長のハインリッヒ・リスナーの側近と言って良い男だ。エーリッヒがオーディンに来た時には出迎えの一員でもあった。信頼されているのだろう。となると、ここに来たのはリスナーの指示か……。
「何の用だ」
「御相談したい事があります」
「……ここでは拙いのだろうな、中へ入るか」
「出来れば」
家の中に入るとアルントは珍しそうに中を見ている。軍の宿舎に入ることなど初めてなのだろう。居間で話すかと思ったが飲み物の用意が面倒だった。ダイニングに案内してインスタントのコーヒーを用意した。手抜きで済まないと言うとアルントは一人暮らしの所に押し寄せたのは自分だと言って済まなさそうにした。まだ擦れてはいないらしい。
「それで、話とは」
アルントが緊張を見せた。
「最初に断っておきます、私がここに来たのはリスナーの命令によるものではありません」
「と言うと……」
嫌な予感がした、コーヒーが苦い……。
「ヴァレンシュタインの頭領の命令によるものです」
「……なるほど、それで」
エーリッヒが彼をここへ寄こした。道理で緊張しているわけだ。どうやら話の内容は碌でもないものになると決まった。コーヒーを苦く感じるのはその所為だろう。
「ローエングラム公がキュンメル男爵のお見舞いに行くと聞きましたが」
「ああ、十二日に行くことになった」
「お止めになった方が良いでしょう、生きて戻れなくなる」
コーヒーを飲もうと思って持ち上げたカップを戻した。アルントに視線を向ける、アルントもこちらを見ている。
「どういう事だ、それは」
自然と声が低くなった。
「キュンメル男爵はローエングラム公を殺そうとしています」
アルントも同じように声を低めた。
「証拠が有るのか、キュンメル男爵はフロイライン・マリーンドルフの従姉弟だ。証拠がなければただでは済まないが」
言っていて馬鹿らしくなった。エーリッヒが彼をここに寄越したのだ、証拠も無しに寄越すはずが無い。
「分かっています、これを
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