第二十二話 黒姫からの警告
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愛人じゃない、ワーグナーの頭領の古い知り合いの孫娘だった。結構世話になった人だと聞いている。
相手の女性は戦争未亡人で歳も二十一ではなく二十五だ。童顔で歳より若く見えたらしい。小さい子供を抱えて大変なのでワーグナーの頭領が密かに援助していた。密かに援助なんてするからややこしくなる。大ぴらにやれば良かったんだ。おまけに周囲の人間に正直に言えば良いものを何を考えたのか密かに囲ったなどと嘘を吐くから……。真相を訊いた時には笑うよりも溜息が出たぜ。
「お仕事の事ですか」
「うん、まあな。どうもすっきりしねえ話でな、イライラするぜ」
そうなんだ、イライラするんだ。可能性は有る、狙うんならここだろう。そう思って調べているんだが誰も金髪を狙おうとしねえ……。考え過ぎなのか?
「私は仕事の事なら口出しはしませんけど、食事の時くらいは忘れたらどうです。美味しいものは美味しく食べないと、健康に良くありませんよ」
「そうだなあ、クリスティン、お前の言うとおりだ。美味い物は美味しく頂かないとな……」
取りあえず食事に専念するか。女房を心配させるのも何だしな。
もう一つポテトのパンケーキを口に入れる。やっぱり美味いわ、それにザウアーブラーテン、こいつもやっぱりビールだよな。歳をとったら美味いものを食うのが一番の幸せだ。クリスティンの良い所は料理が上手い所だな。それと口が堅いって事だ。普通の女は耳から入って口に抜けるがクリスティンは耳から入って腹に納まる。一緒に飯を食っても変に気を使わずに済むのが一番だぜ。
食事を楽しみ始めたと思ったらTV電話の呼び出し音が鳴った。やれやれだな、悩んでいる時には連絡が入らず食事を楽しみだしたら電話がかかってきやがる。大神オーディンは人の楽しみを邪魔するのが趣味になったらしい。女房に視線を向けたが何も言わない、黙ってザウアーブラーテンを口に運んでいる。仕事には口は出さない、五十一年前に決めた夫婦の約束事だ。“少し外すぞ”と言って席を立った。
書斎で受信するとフレーベルの顔がスクリーンに映った。
「どうだ、様子は」
『うーん、動きはねえなあ……。手を抜いてるわけじゃねえがキュンメル男爵家に動きは見えねえ。爺さん、今回ばかりは親っさんの考え過ぎって事はねえかなあ』
自信なさげな表情と口調だな。頭が痛いぜ、ビールで悪酔いしそうだ。
「そうか、今回ばかりは外れたかな……」
『あの屋敷は人の出入りが全然ねえんだ。食料なんかは店の方で持ってくるからな。店も昔からの付き合いでおかしな奴は見当たらねえし……』
フレーベルの言う通りかもしれねえ、今回ばかりは親っさんの考え過ぎか。親っさんに報告して終わりにするか……。
『あそこの邸で頻繁に出入りするのは医者くらいのもんだ。いつ死ぬか分からねえ病人だから忙しそ
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