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『彼』とおまえとおれと

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「じゃ、(せい)っ!また明日ね!」



「おうっまたな!」



 裏返った声と一緒に慌てながら帰る犀を見送っていると、日紅(ひべに)の肩にぽんと手が置かれた。



「……お姉ちゃん」



 日紅の赤い顔を見て、姉は鬼の首をとったようににたりと笑った。



「ふーん?ほーついにそういうことになりましたか。いつからなの?」



「今日だよっ!もうっ!」



 日紅は姉の手を振り払ってずかずかと玄関に向かった。



「やっと犀くんの苦労が報われたわね。わたしあんたが恋愛なんて一切興味ありませんってぽけっとした顔でいるからぱっと出の変な男に引っ掛かったらどうしようって思ってたんだからね。そんなことになったらけなげな犀くんが不憫で不憫で…杞憂(きゆう)で終わってよかったわー」



 日紅はぴたりと足をとめた。



 クラスメイトといい、姉といい。



「…何でみんな知ってるの?」



「ん?犀くんがあんたを好きだってこと?そんなの、見てりゃわかるわよ」



「わかんないよ!」



「そもそも仲いい友達だなんて浮かれてんのはあんたぐらいだっつーの。いーい?夢見てるお子ちゃまな歳でもないんだから、男女の友情は一生だなんて思ってたら痛い目あうわよ」



「もうお姉ちゃんうるさい!」



「はれて犀くんと付き合うことになったんだから、あんたミコヤくんのことはどうするの?」



「犀の話でしょ?なんで巫哉が出てくるの。どうもしないよ。いつもどおり」



「だっかっら、あんたはおこちゃまだって言うの、よ!」



「痛い!」



 姉はばしんと日紅のおでこを叩いた。



「男女の友情なんてもんはね、成り立たないようにできてんのよ。男と女ってどうがんばっても違うものだから、意識しちゃうの。成り立っているように見えてるのは、どっちかが気持ちを隠しているからよ」



「極論だよ!」



「一般論よ。現に、あんたがずっと友達としてうまくいってるって思っていた犀くんも、あんたのこと女として見てたじゃない」



 日紅はぐっと言葉に詰まった。それは、つい先日まで日紅がずっと心の奥底で意識しないようにしていたことだった。



 日紅はそこから踏み出す覚悟をしたけれども。



 男女の友情が成立しないだなんて、それがこの世のもう定められてしまった条理だとしたらそんなの…悲しすぎる。



「ミコヤくんには犀くんと付き合うってもうそのこと言ったの?」



「付き合うとはいってないけど、巫哉には何でも話してるから…それっぽいこ
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