四十六 風吹けど
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ざり合った墨汁が清澄な水に清められ、静かに濯がれてゆく。やがて天を衝くほどの勢いで水の柱が噴出し始めた。ナルトの全身が完全に覆われる。清らかに澄み切った、美しい水の障壁。
「これほどの水を操れるとは…。チャクラ性質は『水』か――ならばッ!」
高らかに叫んだ『根』の一人が印を結ぶ。彼は水壁に向かって術を放った。
「【雷遁・地走り】!!」
電撃が奔る。地上を走り、凄まじい速度で壁に衝突。水の障壁がスパッと真っ二つに切り裂かれる。
焼き焦げになったか、と雷遁を放った『根』の男は嘲笑った。水は雷を通す。当然中心にいる術者もただでは済まない。
しかし直後、男は嘲笑を顔に貼り付けたまま凍りついた。部下達同様、ダンゾウもまた驚きに眼を見開く。
今度は堅固な岩壁が雷を防いでいた。
水の壁と岩の壁。二つの障壁を瞬時に創り上げたナルトは毅然とした佇まいで立っていた。
二重に織り成す壁は彼を護るように取り囲んでいる。難攻不落の城。
正に四面楚歌といった状況下、ナルトは少しも取り乱さない。逆に立場上優勢であるはずの『根』のほうが水を打ったように静まり返っている。
何処か息苦しさを覚え、彼らは救いを求めようと振り向いた。後ろの主に指示を仰ぐ。
だが当の本人であるダンゾウはただ茫然と立ち尽くしていた。まさか、と擦れた声が口から洩れ、拍子に零れ落ちる杖。岩場に当たり一度跳ね飛んだ杖は、渇いた音を立てて崖を転がっていった。
カラカラカラカラ。
主の視線の先を追い、『根』の忍び達は前方に目を向け直す。そして悟った。
自分達が敵対している子どもは、実はとんでもない存在なのではないかと。
杖の転がる音がぴたりと止んだ。何かにぶつかったのだ。
其処にあったのは水の障壁でも岩壁でもなかった。草木一つ生えていなかったはずの絶壁。
其処には何時の間にか、何処までも雄大で何処までも壮大な、巨大な樹木が生い茂っていた。無数に絡み合う枝上で、ナルトがちょこんと腰掛けている。
「武力に訴えるならこちらにも考えがあるよ」
穏やかな眼差しで彼は地上の『根』を見下ろした。だがその眼はかなりの凄みを湛えていた。
「まずはサスケ暗殺の中止指令を出していただこう」
根元に突き当たった杖が大木にしな垂れ掛かっている。その様はまるで全面降伏した蛇のようだった。
「即刻命じられよ、ダンゾウ殿。イタチと大蛇丸…双方を敵に回したくはないだろう?」
崩れゆく砂の城。
やがて瓦解した砂の球体から我愛羅がサスケの前にその身を曝け出した。
傷口を押さえ、荒い息を繰り返す我愛羅の眼を覗き込み、サスケは眉を顰
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