第11話 蒼い少女
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名前は、俺に取っても大切な言葉。その名前を口にするのは、魔術的な問題が生じる恐れが有る」
彼女に理解出来るかどうかは判りませんが、それでも、この説明が限界と言う部分にまで踏み込んだ説明を行う俺。
但し、それも可能性が有ると言うだけ。まして、彼女の固有名詞としてではなく、自然現象としての雪を口にするだけならば、今までも不都合は生じなかったので……。
彼女の名前を呼べない理由を告げた俺と、俺に名前を呼ばれる事のない少女の間に、如月の凍えた夜に相応しい大気がそっと忍び込む。
その瞬間。時計の針が、ひとつの境界線を越えた。
ある一日が過去へと過ぎ去り、そして、新たな一日が歩みを始める時間との境界線を……。
彼女……。長門有希独特の何か。儚いような、哀しいような気を纏った彼女が、その深い湖に等しい瞳に俺を映したまま、時を止めていた。
出会った夜と同じ種類の……。
「……有希」
何の脈絡もなく、まして、何の前振りもないままに、彼女の名前を呼ぶ俺。
これは自らの真名に繋がる名を呼ぶ以上、それなりの覚悟が必要となる行為。但し、彼女の瞳を曇らせてまで、護らなければならない名前でもない。
彼女の表情は……。いや、そんな解説は必要ない。
「そうしたら、今日から、名前の方を呼ばせて貰う事にするな」
魔法と言う世界に身を置くには、余りにも甘い考え。そして、ウカツな行為。まして、彼女の名前は俺の真名に繋がる名前で有る以上、俺がこの名前を呼ぶ度に、霊力が籠められる可能性も有る。
しかし……。
しかし、それでも尚、
長門が、小さく、しかし、確実に首肯いた。
彼女が、今発して居る雰囲気を感じ取る事が出来たのなら、それは、それで、良かった事。
少なくとも、今の俺にはそう思えたのだった。
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