第五章 『魔への誘い』
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いるのは力がないからでは? と考え、力が欲しい! 強さが欲しい! もっと力を! と、力を切望している自分がいることに怒りが沸いていた。
そんな様子のネギを見て、エヴァンジェリンは顔を険しくした。
(このバカ弟子が……。もうこれ以上闇の魔法は使わせられんな)
もともとネギは、心の深層にある心的外傷のせいもあって、闇の魔法との親和性が高い。それはつまり、闇の魔法の侵食が早い素養を持っているということである。その上このような精神状態になれば、闇の魔法の侵食に拍車をかけ、さらにネギを蝕むだろう。エヴァンジェリンはそれを危惧し、そう判断した。
しかしそれをネギへ伝えようか考えを巡らせている時、エヴァンジェリンはハッとしたように振り向いた。彼女が振り向いた先は、例の魔界へ通じる穴だった。
「チィッ! おい貴様ら、来るぞ!」
エヴァンジェリンは既に魔法の詠唱に入っていた。他の者は何事かと、一瞬分からなかった。しかし魔界へ通じる空間の裂け目を凝視すると、夜のように広がる暗闇の遠方がわずかに蠢いているのが分かった。それは次第に大きく見えてくる。いや、正確には大きくなっているのではなく、近付いて来ているのだ。文字通り無数の悪魔が。
※
埃っぽくて薄汚い掃きだめのような街の中。この時間帯ならいつも派手な赤いネオンサインが灯っているはずの店の前に、一台のバイクが止まった。赤いカラーリングのそのバイクが排気の重低音を止めると、ドライバーはヘルメットへ手をかけた。ヘルメットから現れたのは美しい金色の長い髪と、見惚れるような美しい顔だった。その者は頭を二、三度振って髪の乱れを直した。それだけの動作にもかかわらず、どこか妖艶である。
跨っていたバイクから降りると、店を一瞥した。店名をあしらったネオンサインも、部屋の明かりも点いていないようだ。普通なら留守だろうと考えるだろうが、その者は気にせず店の入口へ歩を進めた。そして扉に鍵が掛かっていない事を当然知っているかの如く、扉を押して店の中に入っていった。
「まったく、掃除しろって言ってんのに。それにまた鍵も閉めずに行ったみたいね」
店の中にピザの箱が散乱している惨状を目の当たりにして、家主もいないのに思わずそう呟いていた。
「ま、鍵は閉まってたら蹴破るからいいけどね」
その美貌には似つかわしくない粗暴な言葉を一人言いながら、お目当てのものへ近づいていく。その者はある物を手に入れるために、ここ“Devil May Cry”へ足を運んだのだ。
そのお目当ての物は、“Devil May Cry”の家主、つまりダンテがいつも座っている椅子の後ろに掛けられている剣だ。それは剣というには異様な形で、見ているだけでも魅入られるような妖しい雰囲気を醸し出していた。
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