ある老人の最後
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軍人達と、彼を親と慕うアンドロイドと機械兵達によって厳粛に行われた。
「我が同盟は一人の英雄を失いました!
だが、それは終わりではないのです!
新たな始まりなのです!!
なぜならば、彼がもたらした果実を育み、育てるのは我ら自由惑星同盟市民の義務だからです!」
新進気鋭の国防委員で、老人の政策秘書を長く勤めたヨブ・トリューニヒト氏の長い演説を後ろに聞きながら、彼女は国葬を行っているスタジアムから立ち去る。
その後ろに長いだけの演説を聞かなくてよかったとほっとしている副官にいたずらっぽく声をかけて。
「ヤン大尉。
長くはない付き合いだろうがよろしく頼む」
「はぁ……
戦史研究科卒業生に対して何を期待しているか小官には理解できないのですが」
「決まっているだろう。
エコニアで見せた才覚を眠らせたまま退役させるつもりはないという事だよ」
少し前に起きた惑星エコニアの反乱未遂事件において、ヤン・ウェンリー中尉は事態収拾に功績があったとして大尉に昇進していた。
同時に、自由惑星同盟防衛大学校において戦略研究科において勉強する事を命じられ、卒業後に少佐に任命される事が内定していた。
それぐらいの特権を冥府に旅立った老人は有していたし、それが国力の増大に伴う彼の登場の修正を狙ったものだったというのはこの老人と目の前の緑髪の娘しか知らない。
そして、その為にヤン大尉に最初に与えられた陰口が今演説中のヨブ・トリューニヒト氏と同じく『730年マフィアのお気に入り』だったりする。
同盟軍の幹部要員として扱うというエコニア反乱鎮圧の褒章なのは分かっているのだが、円満かつ平穏無事に退役する事を願っているヤン大尉にとってはありがた迷惑でしかない。
彼女の副官という身分はあくまで宙に浮いた彼を一時的に借りたに過ぎない。
かくして、一人のイレギュラーによって作られた銀河という舞台の上に二人の英雄が上がる。
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