ある老人の最後
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の働きかけによって、数度に渡る帝国のスパイ摘発にあわせて同盟内のスパイは壊滅していた上に、帝国は軍と財政の再編で動けない。
そして、同盟ではなく彼らの表の顔であるフェザーンの国力強化を図る政策が、勝ちすぎた同盟弱体化をたくらんでいた地球教と一致していたのである。
で、全てが明らかになった時に彼らを含めたフェザーンは驚愕した。
強化された軍事力と経済力によって、帝国も同盟もフェザーンを仮想敵国と認識していたのである。
情報制御による戦況のコントロールなど行える信用なと地に落ちており、帝国内貴族にはフェザーンを討つことによって己の膨大な借金の帳消しを図ろうと企む者が続出。
その為、フェザーンは有り余る経済力を使って更なる軍事力強化を図り、さらに同盟と帝国から警戒される始末。
こうして、国力比で帝国:同盟:フェザーンは4:3:3という三すくみが成立してしまっていたのである。
「運がよかったのだろうな」
その老人の一言はゆっくりと時間に溶ける。
彼の視線は今の二人ではなく、過去を見つめていた。
「730年マフィアですらなかった私が、彼らの遺産を受け継いだ。
そして、その遺産を同盟の為に使う事ができた」
副官は彼の独白に何を言っているのだろうと首をかしげる。
目の前の老人は730年士官学校卒業組で、730年マフィアとつるんだ英雄の一人だというのに。
「この先、銀河には英雄が出るだろう。
その英雄がきっと銀河を統一するだろう。
その英雄の下にいたのならばこんなことをするつもりは無かった……」
それは予言でもあり、呪いでもあり、後悔でもあった。
だけど、彼の誰に向けられたかわからない告白の相手を知っている彼女はそれを黙って聞く事しかできない。
「だが、私は自由惑星同盟に生まれた。
生まれてしまった。
その英雄の活躍を見る事無く、歴史より退場する。
そして、英雄が私の全てを私が愛した自由惑星同盟を喰らってゆく。
そんなことさせてたまるか!」
それは、この老人の宣戦布告。
老人は彼女の手を取る。
彼女こそが、英雄を殺す為に作られた老人の刃だった。
「老人のたわごとだが、覚えていてくれると嬉しい。
銀河を引っ掻き回せ」
「私が忘れるとでも?
記録して全ての妹達に伝えておきますとも。
私が消えても、妹達がきっと貴方のご命令をかなえるでしょうから」
それが、三人の最後の会見となった。
老人はその一週間後に老衰によってその生を終え、アルフレッド・ローザス退役上級大将に「わし一人になってしまったなぁ」との嘆き声をあげさせたのである。
自由惑星同盟元帥だった自由惑星同盟評議長の国葬は、その栄光から喪服をつけた
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