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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
六王の対応
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してしまう。
なぜなら、取ろうと上げた腕が血にまみれていたからだ。
レンの腕は擦り傷一つ、切り傷一つ無いが、血に濡れている。
そんな手だからこそ、レンは取ることを躊躇った。
真っ白な手を汚らわしい血で濡らすことを躊躇った。
だが、その少女は宙空で止まったレンの手を抱き寄せた。
レンが驚くのにもかかわらず、べっとりと血に穢れた手を一心に抱く。
少女に触れたそこから、暖かいものが伝わり、広がってくることをレンは感じた。
「………………………………」
レンは、最前線六十九層主街区【センテンス】の宿屋の一室で目を覚ました。当然ながら目覚めがいいとは言えない。
だが、その理由はいつもと少し違っていた。当然ながらその理由は──
「なんだったんだ………あれ……………」
あの少女のことだった。
ベッドの外にぶら下がっていた腕を引き上げ、目に軽く押し当てる。生まれた闇は、さっきまでの濃密な闇とは違い、優しい闇だった。耳には何かも解からない謎の鳥の鳴き声が入ってきて、鼻には窓から入ってくる爽やかな空気が入ってくる。
――あれは、誰だったのだろう。
そんな思考がポツリと浮かび上がった。あれやそれではなく、誰、という言葉を使った。そんな言葉では、自分を助けようとしてくれたあの幼女に失礼だと思ったからだ。
だが、その思考は長続きしない。
すくった砂が、手のひらから零れ落ちていくがごとく、そのいつもと違う悪夢の記憶もまた記憶の残滓が消えていく。
手でいくら記憶を引き寄せても、瞬く間に散っていく。消えていく。落ちていく。
だが、いつまでも寝てはいられない。
今日は、六王会議が開かれるからだ。しかも今回の議題、それはいつもの攻略関係の話ではない。
それはある意味、もうかなり昔の話のように思えるが、《災禍の鎧》討伐作戦の時以上の緊迫感のある議題だ。
あの時は、《災禍の鎧》という明確で、しかも人外のバケモノが相手なので罪悪感は皆無だった。
だが今回は違う。
明確な《ヒト》を相手にするのだ。これで罪悪感が浮かばないのは《ヒト》では無いと、《バケモノ》である自分でもそれくらいのことは判る。
《バケモノ》である自分、レンホウは《ヒト》にはなれない。夢見てもいけない。
《バケモノ》であるレンホウが、《ヒト》に交わろうとした先にはバッドエンドしかない。デッドエンドでも間違いではないが。
《ヒト》を無感情に殺し、無慈悲に殺すのはどんな《ヒト》でも不可能だ。
そう、たとえあのジョニー・ブラックと《赤眼》のザザにすら。
《ヒト》を殺すのは、《バケモノ》だ。
そう世の中は決まっている。決まっている、
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